エンタテインメント大手のKADOKAWAは、2021年6月1日付で、3DCGアニメーション・VFXの映制作を手がける新会社Studio KADANを設立した。
資本金は1億円、KADOKAWAが97.5%を出資する。KADOKAWAはこれまでにキネマシトラスやENGIといったアニメーション制作に出資をしている。しかもいずれもパートナーのいる共同出資だ。Studio KADANはKADOKAWAグループが自ら制作をコントロールできる初の連結子会社スタジオになる。
本社は角川本社と同じ東京都千代田区富士見に置かれる。代表取締役社長はKADOKAWA執行役員でチーフ・アニメ・オフィサーの菊池剛氏、また代表取締役副社長にはアニメーション監督・演出の瀬下寛之氏が就任した。取締役にはKADOKAWAから青柳昌行氏、田村淳一郎氏、CGディレクターの白石照明氏。さらに顧問としてKADOKAWA代表取締役の井上伸一郎氏が加わる。
Studio KADANの設立についてKADOKAWAは、世界におけるアニメーションを取り巻く環境を挙げる。日本が得意とする手描きアニメが人気を集める一方で、米国や中国などのアニメーション制作はフル3DCGが多い。そこで新スタジオを日本の手描きアニメから発展したセルルックのCGアニメーション、世界で主流のフル3DCGアニメーションの双方に注力する。さらに3Dモデリングを使用したXR、プロジェクションマッピング、ゲーム向け映像、実写映画のVFXとあらゆるニーズに対応する。
すでに出資する手描きアニメのキネマシトラス、デジタルアニメを掲げるENGIに、Studio KADANが加わることで、アニメ映像の幅広い表現を可能にする。映像表現の多様さがKADOKAWAの武器になる。
さらにKADOKAWAの目標は大きい。Studio KADANは世界市場に向けた大型IP作品の制作に取り組むとしている。
このキーパーソンのなるのが、瀬下寛之氏の存在だ。瀬下氏は日本のCG映像の黎明期である1980年代から「ファイナルファンタジー」シリーズなどを手がけ、様々な分野のCGやVFXの制作に参加してきた。また2010年代からはセルルックのCGアニメの制作に深く関わることになった。テレビシリーズ 『シドニアの騎士』、『シドニアの騎士 第九惑星戦役』、劇場アニメ『BLAME!』、『GODZILLA』三部作などで監督を務めている。日本アニメファンに馴染みやすいフォトリアルでないCGアニメーション表現に定評がある。
瀬下監督の持つCG分野でのノウハウと制作工程を導入し、様々なクリエーターが参画しやすい環境とCG開発を実現する。これらは映像表現におけるグローバルの差別化に力を発揮しそうだ。