「マチ★アソビ」vol.18 世界でひとつだけの個性派イベント

「マチ★アソビ」vol.18

 アニメ/ゲーム/マンガの大型イベント「マチ★アソビ」の18回目が、2017年5月5日から7日まで徳島市内で開催された。2009年秋にスタートし、今年で8年目を迎える。年2回以上開催とハイピッチのペースにも関わらず、高いテンションを保ち続けるのも驚異的なイベントだ。
 今回、筆者は「マチ★アソビ」でステージトークなどをする機会があり、初めて徳島を訪れた。当初、予想していた以上の個性たっぷりの「マチ★アソビ」は、確実に成功しているイベントでもあった。初心者から見た「マチ★アソビ」を、紹介したい。

 初めて訪れて、まず印象的なのは、人に多さだ。決して交通の便がよいとは言えない徳島にどこから人が集まるのかと不思議に思えるほどだ。
 会場のひとつ徳島駅前商店街のポッポ街から、市内中心部を流れる新町川周辺、さらに東新町商店街に至る会場をつなぐルートは、終日多くの人が行き来する。とりわけ二つの屋外ステージに挟まれ、ufotable Caféも面するしんまちボードウォークは、常に混雑し、真っ直ぐに歩くこともできないほどだった。それでもゴールデンウィークのイベントは秋よりも人は少ないのだという。

 しんまちボードウォークでは、備え付けのパラソルを利用して、数々の企業がブースをだしている。キャラクターグッズ販売もあり、時には声優などのお渡し会も行われる。これも人が多くなる理由だ。川を挟んだ対岸はコスプレエリアになっており、お祭りらしい華やかさを感じさせる。ここも人が集まる。
 ステージもそうだが、いずれも屋外というのがポイントになっている。「ポケモンGO」のヒットの理由はゲームと屋外で歩くことを組み合わせたことと聞いたことがある。「マチ★アソビ」の魅力も同様だ。アニメやゲームのファンを屋外に引っ張り出し、街中を歩かせ、川で遊び、山に足をむけさせる。太陽の光を浴び、歩き周ることで、アニメ/ゲーム/マンガをプラスアルファの別のエンタテインメントに変える。

 川から少しだけ奥に入った東新町商店街にはufotable CINEMAもあり、もうひとつのエリアを形成している。商店街には痛車が飾られ、祭を演出する。
 東新町商店街とポッポ街の特長は、商店街の空きスペースを期間中限定で、イベントや物販、展示会などに活用していることである。地方都市で増加する商店街の空き店舗のスペースを逆手に取ったアイディアだ。時期は限られるが、いつもと違った風景を作りだす。通常の店舗と臨時の企画スペースが入り混じることにより、飲食店を中心に商店街の店舗に人の流れを生み出しているのも感じられる。それが地域活性化にもつながる。

 一方で、やや気になったのは、こうした地域への効果は大きな会場に近い店舗に偏りがちなことである。地元からはより広い範囲での波及効果も期待されるだろう。
 徳島市内中心部88ヶ所にスタンプポイントを設けた「おへんろ。」のスタンプラリーは、そうした解決策のひとつにみえる。イベントに集まった人の関心を周囲に向け、より広い地域を「マチ★アソビ」に巻き込む。「マチ★アソビ」が着実に成長していることもあり、今後はさらに周辺に効果は広がっていくのかもしれない。

 世界のエンタテイメントの有名イベントは、しばしば都心でなく地方都市で開催される。フランスのカンヌ国際映画祭や米国のサンディエゴ・コミコンなどがよい例だ。それは大きな都市のなかのイベントのひとつでなく、街中をイベントで塗り尽くす効果があるからだ。
 また地方都市であることから、ファン、そして企業参加者も会場近辺に宿泊せざる得なくなる。そこから友人と食事をしたり、飲みに行ったりと、様々なかたちのコミュニケーションが生まれる。それが参加者に対する別の魅力になる。

 さらに「マチ★アソビ」は、そうした海外のイベントとも異なる何かを感じさせる。ひとつはイベントのフラット感だろう。従来のイベントは、映画祭のコンペティション上映、大型展示場といった大きな中心が存在するピラミッド型だ。
 しかし、「マチ★アソビ」は人気企画・イベントは多いが、それがメイン企画と打ち立てられているわけでない。全ての企画が、横に並ぶフラット型である。それぞれの楽しさがある。
 実は「マチ★アソビ」のイベントスケジュール、出展情報は分かり難いところがある。例えば公式サイトを見ても、何が目玉なのかが分からない。そこには全てのイベントが等しく、面白いとの思想があるように思える。会場に行って、自分にとって一番をみつけだす。「マチ★アソビ」の楽しさは、そこにあるのかもしれない。

「マチ★アソビ」 http://www.machiasobi.com/

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