“スタジオぬえ”が語るシド・ミード 加藤直之、宮武一貴、河森正治、森田繁の深い愛

Syd Mead未来会議Vol. 04

 日本のSFアート、デザイン、設定を語る時に避けて通れない存在、それが「スタジオぬえ」だ。1974年に設立、所属クリエイターによる数々の絵はSF小説・雑誌を彩った。『超時空要塞マクロス』や『宇宙戦艦ヤマト』などのアニメの制作にも参加、国内アニメへの影響も図り知れない。
 その創設メンバーであるSF画家の加藤直之氏、メカニックデザイナー宮武一貴氏、さらにアニメ監督でもお馴染みの河森正治氏、脚本家・SF設定の森田繁氏の4人が並んで登壇するトークイベントが、2019年3月3日に東京・渋谷で開催された。2019年4月27日から5月10日まで秋葉原のアーツ千代田3331で開催される「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」の開催に合わせたものだ。
 日本のSFアートの第一人者たちが世界のSFデザインのトップアーティストについて、2時間超にわったって語った。シド・ミード展開催記念イベント Syd Mead未来会議Vol. 04 「スタジオぬえの超・SF・ミード談義」と題したなんとも贅沢な企画だ。

 当日の司会はアニプレックスの社長も務めた植田益朗氏。サンライズのプロデューサー時代に『∀ガンダム』で、シド・ミードに深く関わった。今回は自身の会社スカイフォールの代表として展覧会を企画、実行委員長も務める。
 登壇者はビッグネームばかりだけに、前回4人揃ったのがいつか思い出せないというほどのレアな顔合わせだ。しかし語りだせば、そんなことをまるで感じさせない。話は一時も止まることなく、さらに思わぬ方向に移っていく。「“アーティスト“と“デザイナー”の違いとは?」「いまSFアニメは成立するのか?」、そして新ヤマトのデザインにシド・ミードが参加した「YAMATO2520」の話題も。

 当日はニコニコ生放送にてトークの様子がライブ配信もされていたが、次々に飛び出すざっくばらんなトークは司会の植田氏を慌てさせるほど。しかしそうした発言も、4人のシド・ミード、SF、アニメに対する深い思い入れや愛があればこそだ。
 そしてそれでもこの会話の内容は通常の1/3程度、スタジオぬえでは普段はこの3倍の濃密さで会話しているのだとも。スタジオぬえのディープさの一端が現れた。

 もともと4人がシド・ミードを知るようになったのは、スタジオぬえの人のつながり大きい。『銀河英雄伝説』の宇宙艦艇をデザインでも知られる加藤氏は、宮武氏より画集を見せてもらったと。
 その宮武氏は河森氏の友人の小川正晴氏(現オガワモデリング代表取締役)に教えてもらったと。さらに宮武氏から河森氏と森田氏に伝わった。これがまだ高校生の頃だという。

 ミードの特長について加藤氏は、デザイナーというよりもむしろ画家だったのではないかと話す。宮武氏も絵描きがデザイナーになったと、そもそもの絵のうまさに着目する。河森氏はミードの描いた未来が、いま中国のような場所で実現している、技術革新を前提にしたデザインとアイディアの先進性を指摘した。
 森田氏は『∀ガンダム』の際にやりとりした際の思い出を披露。「ものを包み隠すことのないヒト」と意外な一面を明かした。

 4人の語ったシド・ミードの世界は、4月27日から開催される展覧会で堪能できそそうだ。会場には世界初公開を含めて150点もの原画などの資料が展示される。カーデザインの時代から、『ブレードランナー』、『エイリアン2』など世界を変えた作品、それに日本と縁の『YAMATO2520』の設計図や『∀ガンダム』のモビルスーツデザインまで。
 作品そのものだけでなく、ミードの世界観、制作・思考をも辿ることが出来るはずだ。まさに今回の展覧会は、そうした見方がお薦めだと河森正治氏は話す。開催地は東京のみ、そして今回を見逃すと次はいつ実現するか分からないだけに、2019年の必見と言っていいだろう。

シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019
https://sydmead.skyfall.me/
2019年4月27日(土)~5月19日(日) 会期中無休
会場:アーツ千代田 3331 / 1Fメインギャラリー

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