2019年2月23日、アニメーター制作者の労働環境に関する最新の報告が東京・国立新美術館で行われた。文化庁のメディア芸術連携促進事業の一環として、大日本印刷が一般社団法人日本アニメーター演出協会の協力を得て実施した調査の内容を明らかにするものだ。
「(仮)アニメーター実態調査2019」は、2018年11月~12月にかけて実施したアニメーション制作者へのアンケートをもとにしている。アニメ分野の制作環境を把握することで、業界が抱える問題の解決の資料とする。
アニメーター実態調査は、過去に2005年、2009年、2015年に3回実施されている。今回は4回目、4年ぶりの調査となった。
調査内容は制作者の年間収入や労働時間、契約締結状態、生活や仕事の満足度などに広く及ぶ。アンケートは382名が回答、うち男性が57.64%、女性が41.4%、平均年齢は39.26歳であった。
アニメーション制作従事者の労働環境では、賃金や労働時間が厳しいと指摘されること多い。収入に関しては、回答者の平均年間収入が440.8万円であった。前回調査(2015年)の332.8万円を大きく上回った。またこれは国内の全産業平均432万円をも若干上回る。
ただし多様な職種が存在する業界だけに、単純な全体平均値は扱いが困難だ。平均年収が779万円の監督職から125万円の動画職まで開きが大きいためだ。また年齢別では20歳から24歳が154.6万円と全産業平均の262万円を大きく下回る一方で、50歳から54歳では610.8万円と全産業平均を大きく上回っているとの違いがある。
この結果からは若手アニメーターの就業環境が厳しく、ある程度キャリアを重ねると生活の安定が見えてくるアニメ業界の特長が浮き上がる。
それは今回の調査で平均年収が大きく上がった理由も説明できる。前回の調査の平均年齢が34.27歳、今回が39.26歳。勤続年数も11.5年から16.3年に上昇している。アンケート回答者のキャリアがより高くなったことで、その分の平均年収があがったと理解できる。
他の回答項目も、これまで3回実施した調査より改善がみられる。一ヶ月の休日は5.40日とこれまでで一番多く、一日の労働時間も前回の11.03時間から9.66時間と短くなった。近年、アニメ業界でも進む働きかた改革の影響もありそうだ。
一方で、フリーランス就業が5割を占めるにも関わらず、必ず契約締結をするものが13.9%しかおらず、全く取り交わさないが約4割。また老後の生活に不安を感じるものが8割以上、精神的疲労を感じる約8割と課題も大きい。
それでも6割以上が、働ける限りアニメーション制作の仕事をしたいと答えている。若手対策も含めて、この意欲に報いるためのさらなる環境改善が必要になりそうだ。