手描きアニメで4K HDR実現 NetflixとプロダクションI.Gが世界初に挑戦

NetflixとプロダクションI.G

 日本の手描きアニメの魅力を最先端の映像クオリティーで再現する。そんな野心的な試みに、国内トップクラスのアニメ製作会社と世界的な映像プラットフォームが協力して挑む。
 2019年2月14日、プロダクション I.GとNetflixは、4K HDR画質の手描きアニメの制作に向けた試験的なプロジェクトに共同で取り組むと明かした。制作された作品は2019年秋にNetflix オリジナル作品として配信される。Netflixは高画質作品の配信に積極的で、4K/HDRの豊富なライナップが鑑賞できる「プレミア」サービスプランを提供している。

 近年は映像技術の進展にともない、映画やテレビ番組の高画質化が急激に進んでいる。なかでもテレビ対応が普及期にはいった4Kは注目が高い。
 そうしたなかでテレビ放送や配信の人気ジャンルであるアニメでは、4K対応、HDR対応は遅れ気味だ。撮影カメラのグレードアップで対応できる実写に対して、アニメは映し出される絵そのものの密度を引き上げなければいけないためだ。とりわけ作画を人の手で行う手描きアニメは、これまで以上に細かな絵を要求される。

 しかし近い将来は、アニメでも4K解像度を要求されるケースが増えることが予想される。今回のプロダクションI.GとNetflixの試みは、日本が得意とする手描きアニメでそれにどこまで迫れるかの挑戦だ。ここで技術的にも、コスト的にも制作可能となれば、アニメ業界にドラスティックな効果をもたらす。そして先行者となるプロダクションI.GとNetflixはこの分野で優位性を確保できる。
 共同プロジェクトでは、プロダクションI.Gとクリエイターが持つ知見を活かし、最新のテクノロジーや制作手法を用いた制作を目指す。

 Netflix 側はクリエイティブテクノロジーエンジニアの宮川遙氏が、共同プロジェクトの統括責任者となる。プロダクション I.Gでは齋藤瑛氏が演出を担当する。齋藤氏は「機材などのハードルもあり、4KやHDRは業界的にも未開拓な分野」とするものの、「表現者として、より美しい映像を制作する機会を常に探る」と意欲的だ。
 ただし目指す成果は未知数だ。そこでまずは試験的な共同制作にするとみられる。正式な配信は決定しているものの、今回は作品タイトルや長さ、話数、またストーリーやジャンルも明かされなかった。

 Netflixは世界最大規模の定額課金型の映像配信プラットフォーム。独自の番組ラインナップを得意とし、日本アニメも力をいれるジャンルのひとつである。これまでも『BLAME! 』、『GODZILLA 怪獣惑星』『詩季織々』などをHDRで配信している。
 プロダクション I.Gとは、2018年にNetflixオリジナルアニメとして『B: The Beginning』を配信している。また同年1月に包括的業務提携契約を締結するなど、協力関係を築いている。

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