包括提携から「ULTRAMAN」まで、I.Gが語ったNetflixと歩んだ5年間

Netflixとの歩みについて

 2010年代の映像配信プラットフォームの急激な普及が、日本アニメの世界ビジネスを大きく変えた。その主役のひとつにグローバルプラットフォーマーのNetflixがある。配信を通じて日本アニメの世界的な認知を向上させ、その人気を拡大した。日本国内においてはNetflixシリーズとして数々のアニメ作品に企画段階から関わるようになった。
 Netflixは日本のアニメに何をもたらしたのか。2023年3月24日、都内Netflixオフィスにて、プロダクション I.Gとグループ会社WIT STUDIOの関係者がメディア向けに語った「Netflixとの歩みについて」は、そんなNetflixとアニメ業界との関係変化を窺わせるものだった。

 登壇したのはプロダクション I.G代表取締役会長の石川光久氏、同代表取締役社長でWIT STUDIO代表取締役社長も務める和田丈嗣氏、それにプロダクション I.Gプロデューサーの牧野治康氏の3人。
 プロダクション I.Gは2018年に、国内アニメスタジオでは初めてNetflixと包括的業務提携契約を締結したスタジオのひとつとして注目を浴びた。『B:The Beginning』をスタートに、『攻殻機動隊 SAC_2045』やWIT STUDIOの『ヴァンパイヤ・イン・ザ・ガーデン』、『バブル』などの話題作に取り組んでいる。5月11日には、『ULTRAMAN』FINALシーズンの世界独占配信もスタートする。

 まず5年前と現在の変化について問われた石川氏は、「自分たちが変わったのでなく、アニメ業界が変わった」と答えた。包括的業務提携契約締結の当初は、製作委員会などの業界の空気は暖かいとは言えず、冷たい風が吹いていたと表現する。配信が企画・制作のメインプレイヤーとして受け入れられている現在とは、だいぶ異なった雰囲気が当時はあったようだ。
 同時にI.Gの側からは、Netflixに「何か壊して欲しい」ということを求めているのだという。アニメーションを作っている人たちを前面に出す、そういう作品をお客さんに届けて欲しいと期待する。そうした心意気をNetflixに感じたことが、両社が共に歩むことになった背景にあった。

 和田氏は「包括業務提携以降で、アニメーションスタジオとして本当に大きくなっています」と話す。例えば海外から視点や課題に対して気づかせてくれる、スタジオが中心となって取り組まないといけないと教えてもらったと。
 そしてプラットフォーマーとスタジオがダイレクトにつながることで、お客さんからのフィードバックを直接受けることが出来るようになった。「ファンがいま何を求めていて、どう考えているかを知ることが出来るようになったのが刺激的です」と言う。

「ULTRAMAN」

 またNetflixでの配信は、アニメの作りかたにも影響を与えている。『ULTRAMAN』や『攻殻機動隊 SAC_2045』のプロデュースを担当している牧野氏によれば、当初「ULTRAMAN」シリーズはテレビ作品のように各話の冒頭に前エピソードを振り返る映像を入れていた。しかし、いっき見される可能性のある配信ではかえってそれが流れを阻害することに気づいた。そしてセカンドシーズンからは、そうした映像を切るようにした。神山監督も荒牧監督もいっき見する視聴者に対する作り手の意識の改革に非常に注力したという。

 最後に石川氏は、未来についてまとめた。「Netflixとの包括的提携はまだ続くと思います。そのなかで時代は変わると思いますが、できればNetflixは変わって欲しくないなと思います」。
 Netflixのすごいのは、日本にいながらNetflixのアメリカ本国と同じ契約が出来ることと、現在のスタジオにとってのメリットを指摘する。日本にいながら、野球で言えばメジャーリーグでプレーし、作品に専念できる。Netflixと組むことでストレスがないという。そうした環境を今後も続けて欲しいと話を締めくくった。

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