世界4大アニメーション映画祭として知られるオタワ国際アニメーション映画祭で、今年も日本からの作品が大きな賞に輝いた。9月24日、カナダ・オタワ市内の国立アートセンターで授賞式が執り行われ、各賞が発表された。
このうち日本からオフィシャルコンペティションで出品された折笠良氏の『水準原点』が、実験・抽象アニメーション部門(Experimental or Abstract Animation)で最優秀賞に選ばれた。審査員からは、「言葉と映像の質感、音が統合された詩的な美しさを持つ作品」、「何とも判別しがたいミステリアスな内容に心が動かされる」と高く評価された。
『水準原点』は同じく世界4大アニメーション映画祭に数えられるザグレブ国際アニメーション映画祭の準グランプリにあたるゴールデンザグレブ賞をすでに受賞している。また第70回毎日映画コンクールの大藤信郎賞にも輝き、国内外でその高い評価を積み重ねている。
作品は戦後を代表する詩人・石原吉郎の詩「水準原点」を題材にしている。白い粘土の波の中に散文的に石原の詩から採られた言葉が浮かんでは消えていく。膨大労力による制作で実現するアニメーションだが、それを忘れさせる静謐な映像が続く。
オタワ国際アニメーション映画祭は、北米を代表するアニメーション映画祭として毎年大きな関心を集める。2016年で開催40回目を迎えたが、今年は世界86ヵ国から2311作品のエントリーがあり、短編80本、長編7本がコンペティションとして上映された。日本からは『水準原点』 のほか、同じ折笠良監督の『Sugar Lump』、山村浩二監督の『サティの「パラード」』も選ばれている。また岡崎恵理監督の『Feed』が上映された。
オタワでは、昨年、2015年には二瓶紗吏奈氏が『帽子をかぶった小さな人々』で短編部門グランプリに輝いたばかり。2年連続の日本からの受賞で、その存在感も発揮した。
今年の短編部門グランプリには、カナダのダイアン·オボムサウィン監督の『I LIKE GIRLS』が、また長編映画のグランプリにはカナダ・フランス共同製作の『LOUISE EN HIVER』(ジャン=フランソワ ラギオニ監督)、そして長編映画特別賞(Honourable mention)はヨーロッパ共同製作の『CAFARD』(ジャン・ブルティール監督)が受賞している。
また受託部門(Commissioned Animation)では、米国の映像集団PESの制作した『Paper』が選ばれた。日本の自動車・二輪車のメーカーであるホンダがこれまで作り出した乗り物をイラストレーションで描き、ストップモーションでつないだ作品だ。
オタワ国際アニメーション映画祭
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