日本アニメ配信プラットフォームで世界最大規模のクランチロールが主催する「クランチロール・アニメアワード2024」の授賞式が2024年3月2日、東京都内のホテルの会場で開催された。当日は、アワードを受賞するアニメのスタッフやクリエイター、それにアニメ音楽のアーティスト、米国を中心に世界からアニメを愛するセレブリティも集まる華やかな一夜となった。
クランチロール・アニメアワードは、世界のアニメファンが最も素晴らしいアニメを選ぶ賞として2017年にスタート、今回で8回目を迎える。ただし授賞式会場を東京とするのは前回2023年が初、今回は2回目だ。
「日本アニメを世界に向けて配信するプラットフォーム」のため、日本自体ではサービス提供されていないため日本国内でのクランチロールの知名度は必ずしも高くない。それでも日本で授賞式を実施するのは、アニメの聖地である日本での開催というブランドづくりが理由だろう。日本在住の制作スタッフやアーティストの参加も多く期待できる。
実際に授賞式の様子はクランチロールを通じて全世界にライブ配信され、アワード自体が配信サービスの有力コンテンツになっている。さらにtwitchやYouTubeでも無料配信する。こちらは宣伝効果を期待するものだろう。
イベント冒頭には、昨年に引き続きソニーグループCEOの吉田憲一郎氏が登壇。クランチロールが世界のアニメカルチャーのハブになっている意義を熱く語った。大掛かりなイベントと合せて、ソニーグループのクランチロールへの期待の大きさを感じさせた。
実際にクランチロールの有料会員数は、2023年12月末時点で世界1300万人を超えるほどまで成長した。ジャンル特化した配信プラットフォームとしては、ずば抜けた集客力を誇る。親会社ソニー・ピクチャーズのビジネスの中でもその存在感は急激に増していると伝えられるほどだ。
授賞式では、アニメ・オブ・ザ・イヤーをはじめ20部門以上の優秀賞が次々に発表された。受賞作、ノミネート作からは、世界の人気アニメのトレンドが読み取れるのも興味深い。
アニメ・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは、クランチロールでも世界配信された『呪術廻戦 懐玉・玉折』だ。前日譚が劇場アニメ化された『呪術廻戦』のさらに昔の話を辿るエピソードからなるシリーズで、派手なアクションやキャラクターの魅力が持ち味。世界中から支持を得ているだけに、納得の結果だ。
『呪術廻戦 懐玉・玉折』はアニメ・オブ・ザ・イヤー以外にも、最優秀アクション作品賞、最優秀キャラクターデザイン賞、最優秀撮影賞、最優秀監督賞、最優秀エンディング賞、最優秀オープニング賞、最優秀助演キャラクター賞、最優秀声優賞(日本語)の8部門を受賞、その人気ぶりと評価の高さをみせつけた。
今回の特徴は『呪術廻戦 懐玉・玉折』に限らず、「少年ジャンプ」関連のマンガを原作した作品が多い点だ。最優秀アニメーション賞などの『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』、最優秀アニソン賞の『【推しの子】』、最優秀コメディ作品賞の『SPY×FAMILY 』Season 1 第2クール、最優秀継続シリーズ賞の『ONE PIECE』、最優秀新シリーズ賞『チェンソーマン』などである。
原作の面白さは勿論だが、マンガアプリ「MANGA Plus by SHUEISHA」のグローバルでの急激な普及が、これらの作品の認知度の推し上げている効果は無視できない。マンガ人気からアニメ化、アニメ化からさらに原作の知名度のプッシュアップ、さらにキャラクター展開と人気を拡大するスパイラル効果を実現している。
近年、ますます盛り上がる日本アニメの世界的な人気には、勿論クランチロールの役割も大きい。ネットワークを世界中に張り巡らせることで、日本アニメ人気を築く一翼を担っている。
ハリウッド映画や韓流ドラマ、さらに各国、新興国の成長と、世界の映像ビジネスはますます競争を増している。しかし日本アニメは作品の素晴らしさに加えてこうした作品を届ける仕組みに強みを持ち始めている。いましばらくは、日本アニメの人気も続きそうだ。