2016年に日米の日本アニメビジネス関係者を驚かせた北米2大アニメ企業の提携が、開始から2年で終了する。2018年10月19日、海外向け日本アニメ配信の大手クランチロール(Crunchyroll)は、アニメ配給会社ファニメーション(FUNimation)との提携契約が終了することを明らかにした。
クランチロールによればこれはファニメーション側の決定で、11月に両社の提携契約は終了する。11月9日以降、クランチロールではファニメーションが配給する日本アニメの一部は視聴が出来なくなる。『僕のヒーローアカデミア』、『進撃の巨人』などの主力タイトルは配信を続ける。新たな個別の契約が結ばれるようだ。
クランチロールは日本アニメの海外向け配信の最大手。2008年より日本との同日配信を武器に急成長を続けてきた。現在はイベントやグッズ販売なども手がけることで、北米の日本アニメビジネスで大きな存在感を持つ。
一方、ファニメーションは米国の日本アニメ配給の老舗。1994年より業界のトップ企業として活躍している。『ドラゴンボールZ』、『ONE PIECE』、『進撃の巨人』、『僕のヒーローアカデミア』などヒット作の北米ライセンスを数多く保有する。動画配信事業にも積極的で、独自の配信サービス「FunimationNow」を運営している。
ライバル関係にある2社が相互に保有する作品を提供し合う提携を発表したのは、2016年9月になる。日本アニメの北米向け配信サービスの急成長により、ライセンス価格が高騰、2大企業が手を結ぶことでこうした状況を回避する狙いもあったとみられている。
クランチロールは、サービス開始当初から目指していた日本の主力アニメをほぼ全てカバーするとの目標に近づく。一方でファニメーションは、拡大し過ぎたラインセンス獲得費用を削減できるというわけだ。
またアニメDVD/Blu‐rayがいまだ根強い顧客を持つ一方で、クランチロールはビデオパッケージのビジネスノウハウを持たない。ファニメーションのビデオソフト制作・販売部門から、クランチロール作品のDVD/Blu‐rayを出すことが可能になった。またすでに予約開始し、パッケージ化発表済の作品のDVD/Blu-rayの発売については、提携終了後も中止はしない。
相互補完に見えた提携だが、スタート開始後の短期間で状況が大きく変った。ひとつは2017年夏にソニー・ピクチャーズがファニメーションを買収、子会社化したことだ。これによりファニメーションは資金面で大きな後ろ盾を得た。
一方でクランチロールを運営するイレーション(Ellation)とその親会社オッターメディア(Otter Media)は、今年8月にAT&Tが買収。AT&T傘下のワーナー・メディアの子会社となった。両社がそれぞれ異なったハリウッド・メジャーのグループに入ったかたちだ。こうした事情も提携終了につながったと見られる。
それでもクランチロールにとっては、ファニメーションの持つ有力タイトルを失うリスクは大きい。そこで有力タイトルは引き続き配信との契約になったとみられる。
また同時にクランチロールの兄弟サービスVRVが、別の日本アニメ配信サービス「HIDIVE」との新たな提携を発表した。HIDIVEは日本アニメ配給のセンタイ・フィルムワークス(SENTAI FILM WORKS)と近く、コアファン向けの作品を得意とする。HIDIVEと提携することで、ラインナップを補うとみられる。またDVD/Blu-rayの発売も、センタイ・フィルムワークスとの連携が期待できそうだ。