「少年ジャンプ」連載の人気マンガ『チェンソーマン』は2020年12月のアニメ化決定告知以来、アニメ・マンガファンから大きな注目を集めている。22年8月5日には、配信生番組内でシリーズ放送開始が22年10月、そしてテレビ東京他での放送、さらにメインキャストが発表され、再びファンから喝さいを浴びている。
しかし『チェンソーマン』を巡る熱狂は、日本だけでない。とりわけ海を越えた米国カリフォルニア州サンノゼでは、大熱狂を巻き起こした。
8月7日、現地で開催される「クランチロールEXPO2022」にて「『チェンソーマン』パネル by MAPPA &クランチロール(Chainsaw Man Panel by MAPPA and Crunchyroll)」と題したトークイベントが設けられ、日本から本作のアニメーション制作をするMAPPA代表取締役の大塚学氏、取締役・木村誠氏が現地を訪れたのだ。ふたりは5日に発表されたばかりの『チェンソーマン』の最新情報を届け、作品の製作・制作などのトークをファンの前で繰り広げた。
「クランチロールEXPO」は、米国でも数多い日本のアニメやマンガにフォーカスしたイベント(アニメコンベンション)のひとつである。しかしほかのイベントと違うのは、アニメ配信大手プラットフォームであるクランチロールが主催、名前を冠しているところだ。
イベントはクランチロールのイベント進出として2017年にスタートしたが、2020年と21年はコロナ禍でもあり、オンラインでの開催となった。そのため今年は3年ぶり、4回目のリアルイベントで、その歴史は始まったばかりである。
それでも配信プラットフォームのネットワークを活かしてトークイベントのほとんどを配信する。リアルとオンラインを融合させるのが新しく、また強みになっている。
作品の権利者と直接結びつくネットワークと配信ブランドの認知の高さも、イベントづくりでクランチロールの強みになっている。今回の『チェンソーマン』パネルもそのひとつだ。『チェンソーマン』とMAPPAを掲げた海外のイベントは、7月の米国ロサンゼルスの「Anime Expo 2022」、フランス・パリの「Japan Expo 2022」に続く3つめだ。クランチロールでは日本と同じ10月から『チェンソーマン』を配信することが決まっている。MAPPA関係者を招いた大型イベントの実施も、そうしたつながりがあればこそである。
期待の大型作品だけに、集客力も抜群だった。数千席の会場ホールは、とりわけ若い世代のファンで埋め尽くされた。これまで日本で人気のマンガでも、米国ではアニメ化後に人気がでてベストセラーになることが多かった。しかし『チェンソーマン』は、マンガリリースの段階で大人気で、米国ファンにとっても満を持してのアニメシリーズだ。珍しい例になっている。
それだけに海外ファンからのアニメ映像に対する期待も大きい。どんなかたちのアニメになるのかは大きな関心事だ。多くのファンが会場に足を向ける理由である。
トークイベントは現地MCのテンションの高い紹介で大塚学氏、木村誠氏の両名が巨大な2面のスクリーンを持つ大きなステージに登壇するところからスタート。
プロデューサー2名の話となるとやや固い内容になるのかなとも思ったが、MCの巧みなトークとふたりの話の面白さもあり飽きさせない。
さらに今回新たに発表された最新PVも随所で紹介。メインキャストに決まった戸谷菊之介、楠木ともり、坂田将吾、ファイルーズあいらの声優陣の意気込み、原作・編集者で「少年ジャンプ」の林士平氏のメッセージなどを挟みつつ、MCからの質問を軸に企画のスタートから好きなキャラクターといったことまで広い話題に及んだ。
トークのスタートは直球の質問で、現在の制作の進行状況から。やはりファンが一番気になるのは、そこのようだ。これに対して大塚氏はコロナなどで問題は発生したが、10月の放送に向けて一生懸命作っていると話す。
また制作スタッフが若手中心となったのは、原作者の藤本タツキ氏に近い世代であることを大切に考えたためと。声優陣については若手からベテランまで数多くのオーディションをしたが、結果として若い声優が中心となったとも紹介した。
ゲストのふたりはMAPAAの経営陣でもあることから、ビジネス面での面白い話題もでた。国内のシリーズアニメは通常複数の企業が出資する製作委員会で制作することが多いが、『チェンソーマン』はMAPPA一社が全額出資をしている。
これはMAPPAにとって初めてのことで、木村氏は「ビジネス面でもチャレンジしていることが多い」と話す。今回のようなティザー映像の告知や商品化、それらを届ける方法などもMAPPAが決めていくという。
またイベントのスケジュールや計画も自分たちで決めていっている。そして今後の大きな発表は9月に日本で開催されるワールドプレミアイベントだと明らかにした。先行試写の本編こそ配信はされないが、イベントは世界に向けてライブ配信する予定だ。海外イベントの忙しいスケジュールも含めて、日本と同時に世界のファンにも届けることを意識した。それが『チェンソーマン』のようだ。