「クランチロールEXPO 2022」が、8月5日から3日間の予定で米国カリフォルニア州のサンノゼ・コンベンションセンターでスタートした。米国のアニメ配信大手クランチロールが自らのブランド押し出した大型イベントである。
コスプレや音楽、グッズ販売など多くの企画があるなかで、数々のトーク、上映会を実施する「クランチロールステージ」は目玉となっている。2000席以上はあると思われる広いホール、ふたつの大型スクリーンと巨大なクランチロールにロゴを舞台中央に設置したメイン会場を利用する。
初日となった5日午後からは、ここで『文豪ストレイドッグス』、「ボンズの舞台裏(Behind the Scenes at BONES)」、『モブサイコ100』と3つのイベントが連続して実施された。共通するテーマは、アニメスタジオのボンズである。『文豪ストレイドッグス』、『モブサイコ100』はいずれもアニメーション制作をボンズが担当している。
ボンズ社長の南雅彦氏と倉兼千晶プロデューサーが『文豪ストレイトドッグス』を語るところから始まり、10月からスタートする第3期『モブサイコ100』1話、2話の先行上映会とトークが終了する19時半まで続き、「ボンズディ」との感じであった。
この3つ全てのイベントに登壇したのが、南雅彦氏。作品とアニメの面白さをたっぷり盛り込んだ語り口で会場から大きな歓声を受けていた。
なかでも「ボンズの舞台裏」は、作品やクリエイター切り口でなく、スタジオ自体の魅力を伝えるアニメコンベンションらしい企画だ。南氏がボンズの歴史から主要作品について1時間以上にわたり紹介した。
まずは南氏自身の話から。仕事のきっかけは、やはり子どもの頃からアニメが好きだったことだ。学生時代には『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』が好きになり、映像関係で大学に進学し、卒業後にアニメ制作会社サンライズに就職した。当初は監督志望だったが気がついたら制作を選んでいた。
自身が立ちあげたボンズの名前が広く知られたのは『鋼の錬金術師』(2003~)からだが、当時は『ウルフズレイン』や『桜蘭高校ホスト部』と人気作品が重なったこともあったという。
その後は「エウレカセブン」シリーズ、『ジョゼと虎と魚たち』、『SK∞ エスケーエイト』、『ヴァニタスの手記』、『モブサイコ100』、『文豪ストレイドッグス』、『僕のヒーローアカデミア』と近作を中心に企画の立ち上がりや見どころなどについてがテーマとなった。『モブサイコ100』では、本作が現在主流のCGハイブリッドを一切使わず、手描き作画のみであること、非常に手間がかかっていることを何度も強調していたのが印象的であった。南氏の手描きアニメのこだわりが伝わってきた。
さらにファンから注目されたのが、南氏の生解説によるボンズの紹介ビデオだ。ボンズのスタジオ玄関から始まり、スタジオの中まで。『文豪ストレイドッグス』の新井伸浩氏、次回作にとりかかっているという川元利浩氏らアニメーターが絵を描いている様子などあり、貴重な映像になった。
最後に「今日はこんなに集まっていただいて本当にありがとうございます。ボンズがアニメーションの制作会社です。いつでも新しい作品を皆さんに届けたいと思って頑張っています。来年の作品が何かははっきりと言えないですが、新たな作品も作っています。是非、それを楽しみに待って、見ていただければ」とファンにメッセージを送った。
米国はコロナ禍対応が進み、今年の春以降、大型イベントの開催が急速に戻りつつある。しかしアニメコンベンションでは人出は戻りつつあるが、日本からのゲストはまだ以前ほど多くないのが現状だ。そうしたなかで直接現地に赴き、アニメの魅力を伝えた南氏の言葉は、ファンにとって重みがあったのでないだろうか。
「クランチロールEXPO 2022」
https://www.crunchyrollexpo.com/