アニメーション分野では世界最大の国際映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭が、6月11日に開幕した。コンペティション部門アワード発表もある16日まで、世界各国から選りすぐられた短編、長編、テレビシリーズまで数多くの作品が上映される。
11日夜に開催されたオープニングセレモニーは、そんな映画祭に相応しい華やかなものとなった。フランスの巨匠ミッシェル・オスロ監督の6年ぶりの長編映画『Dilili in Paris(パリのデリラ)』とドリームワークス・アニメーションのウィリアム・サラザール監督『Bird Karma』がプレミア上映された。個性たっぷりの2作品は、多様化するアニメーション表現を世界に届けるアヌシーにぴったりなものとなった。両監督はアヌシーで作品を届ける喜びの挨拶をし、世界のアニメーション関係者から大きな拍手を受けていた。
1947年生まれのミッシェル・オスロ監督は、『プリンス&プリンセス』『夜のとばりの物語』『キリクと魔女』などで知られている。国際的なアワードを重ねて、高畑勲監督が熱心に日本での紹介活動をしていたのも有名だ。
『Dilili in Paris(パリのデリラ)』は、ベル・エポック時代のパリを舞台に不思議な事件に巻き込まれる少女デリラの冒険を描く。ストーリーもさることながら、大きな関心を集めたのは巨匠による2Dと3Dを融合させた映像だろう。
オスロ監督は切り絵に代表される絵本のような平面的な映像を持ち味としてきた。しかし、本作では街中のシーンなどにCGを大胆に導入する。ベル・エポックのパリがリアル感を持って迫ってくる。
一方でシンプルなデザインとシルエット、絵画を彷彿させるキャラクターやその動きはこれまでどおり。CGパートもイラスト的にトゥーンレンダリングしているが、CGの持つ艶めかしさが平面的なキャラクターと溶け合うことでなんとも不思議な映像を作りだす。
これに対象的なのが、ウィリアム・サラザール監督の『Bird Karma』。きらきら輝く魚を捕まえようとする鳥をコミカルに描いた。鉛筆で描かれたようなタッチのキャラクターのメリハリのある動きを強調し、昔の手描きの短編アニメーションを思い出させる。
よりクリアーでリアル、精密な表現を追求してきたドリームワークスのようなCGスタジオが手描きの表現の再現を新たに追及しているような面白さがあった。
そして開幕した映画祭も、前年に引き続き新しいアニメーションの可能性を追求する。今年のゲスト国にはブラジルが選ばれている。ブラジルだけでなく、ラテンアメリカ全体を積極的に紹介しており、アニメーションの新興国に大きなスポットを当てる。
カンヌ映画祭では締め出されたNetflixはここではスタジオフォーカスの企画を持ち、Amazon、Googleなどの企画もある。さらに今年はVR関係の作品上映、企業出展も多い。新しいビジネスストラクチャーやテクノロジーの取りこみも積極的だ。
世界で最も古いと同時に最も新しい。それが近年のアヌシー国際アニメーション映画祭の躍進につながっているようだ。現在、世界でも最も見逃していけないアニメーション映画祭となって理由でもある。