2016年11月12日の公開から3ヵ月近く、大ヒットを続ける劇場アニメ『この世界の片隅に』がいよいよ米国に上陸する。米国の配給会社Shout! Factoryが北米の配給権を獲得、この夏に劇場公開も予定する。北米での公開ともなれば、次回の米国アカデミー賞の選考対象ともなるため、さらなる話題づくりや盛りあがりも期待できる。
『この世界の片隅に』はマンガ家・こうの史代の原作に基づいて、片渕須直監督のもとMAPPAがアニメーション制作を担当した。第二次世界大戦前後の広島と呉を舞台にひとりの女性・すずの日常を描いた。
アニメーションならではのリアリティを実現することで、高い評価を受けている。毎日映画コンクール日本映画優秀賞、大藤信郎賞、キネマ旬報ベスト・テン1位、ブルーリボン賞作品賞、監督賞を受賞とその評価は圧倒的だ。興行収入も好調で、2016年を代表する日本映画となった。
今後は海外での展開開も期待されているが、スケージュールや配給会社が明らかにされたのはこれが初になる。海外での配給権はイギリスのAnimatsu Entertainmentが統括しており、そこからさらに世界の配給会社に販売される。
Shout! Factoryは、米国のリチャード・フッズが立ち上げたブランドだ。独立系の配給会社としてテレビ番組やジャンル映画を中心に取り扱っている。その作品群にはマーベルやハズブロ、ニコロデオンといったスタジオが並ぶ。キッズ向けの作品も得意としており、こうしたつながりが、アニメーションのラインナップの充実につながる。
2016年にはフランス/デンマークの合作の『Long Way North』の配給権も獲得している。海外映画祭で評価を受けた長編アニメーションは、これまでShout! Factoryが扱ってきた作品と路線が異なる新しいジャンルへの展開となっていた。『この世界の片隅に』は、その第2弾と言えそうだ。
Shout! Factoryは、この1月には東映アニメーションの劇場映画シリーズ『デジモンアドベンチャー tri.』の配信権・放送権・ビデオグラム化権も獲得している。日本のアニメに高い関心を示している。
北米で日本のアニメ映画の権利を購入する企業は必ずしも多くない。深夜アニメ以外となるとほとんど数社に絞られるのが現状である。Shout! Factoryが『この世界の片隅に』でかたちを残すことが出来れば、日本企業にとっては新たな販売先として今後も期待できるかもしれない。