日本のマンガ、アニメの人気拡大に大きな役割を果たした作品が話題になる際に、必ず挙げられるのが大友克洋の『AKIRA』だろう。緻密な作画にサイバーパンクな表現が、世界中のファンを魅了した。1980年代の早い時期からマンガ、そして大友自身が監督となった劇場アニメが大人気を博し、多くのクリエイター、アーティスト、作品に影響を受けたことはよく知られている。
その人気は、初出からおよそ30年経った現在も健在のようだ。講談社の米国でのマンガレーベルKODANSHA COMICSは2017年10月31日に、『AKIRA』の連載開始35周年を記念した『Akira 35th Anniversary Box Set』を発売したが、これがベストセラーになっている。
ポップカルチャービジネス情報のICv2は、12月7日のニュースで2017年11月のBookscanのグラフィックノベル(単行本形式のコミック・マンガ)月間ランキングで本作が第5位になったと報じている。グラフィックノベルは通常定価が数十ドル、それに対して『Akira 35th Anniversary Box Set』は定価199.99ドルと日本円で2万円を超える。ベストセラーとしては、異例の高価格商品だ。
ICv2は売上げベースであれば、11月の1位は『Akira 35th Anniversary Box Set』だっただろうとしている。さらに販売の半分以上がAmazon.com経由だったと分析している。実際に12月になった現在も米国のAmazon.comでは「ベストセラー1位」と紹介され、販売価格も119.99ドルと魅力的だ。
英語版『AKIRA』は、これまでにもたびたび米国で刊行されてきた。最初は1988年からスタートしたマーベル・コミックス系列のEpic Comicsによるものだ。まだ日本マンガの英語翻訳出版が一般的でない時代のため、当時のアメコミ文化に合せて全ページをカラーリング化し、さらに日本では右開きだった作品をアメコミと同じ左開きに変更とした。日本ファンには見慣れない形式だ。
その後、2000年初めにモノクロ版としてDark Horse Comicsから再出版され、さらに2009年にはKODANSHA COMICSから新たに刊行された。その際には、全6巻各巻24.99ドルと設定した。。
しかし、これまでの発売は全て80年代の頃からの左開きを踏襲してきた。Box Setではこれを初めて右開きとした。日本マンガのカルチャーが2017年にようやく『AKIRA』まで達したというわけだ。
『Akira 35th Anniversary Box Set』は、このほか日本と同様の全6巻のかたちでハードカバーとしている。さらに「AKIRA CLUB」と題されたアートブックも同梱し、特装ボックスに収納する。こうしたかたちが、マンガ『AKIRA』の完全版として幅広いファンからの支持を得たと言えそうだ。