2018年6月1日、総務省は日本の放送コンテンツの海外輸出額をまとめた「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2016年度)」を公表した。調査は毎年国内の放送事業者と日本動画協会に加盟するアニメ製作会社へのアンケート調査をまとめたものだ。
発表によれば、2016年度の放送コンテンツの海外輸出額は393億5000万円となった。前年度比では36%増となるが、今回よりアンケート内容を変更し、さらに商品化権にゲーム化権を明示するなどしたため厳密な比較はやや難しい。それでも全体の傾向を見れば、放送コンテンツの海外輸出増加基調は確かだ。
商品化権の輸出は、ゲーム化権を厳密にしたことから前年の59.5億円から128.7億円に倍増している。アニメ番組の中国向けのスマホアプリゲーム展開の好調などを反映したと見られる。
番組放送権は28%増の123億7000万円、インターネット配信権は成長が続き23%増の105.9億円だった。フォーマット・リメイク化も全体の割合は小さいが、26%増と拡大傾向が続く。ただし、ビデオ・DVD化権は前年度の13.7億円から9億円に減少した。
ジャンル別の輸出では、依然アニメの強さが際立った。アニメの輸出は225.1億円と全体の77%を占める。アニメの強さは全体の6割を占めるアジアだけでなく、北米とヨーロッパでもニーズが高いことである。番組販売権だけに限れば北米向け輸出の95%はアニメとなっている。
一方で、ドラマはほとんどがアジアとなっている。またバラエティ番組はフォーマットやリメイクが中心で、アジアよりもヨーロッパ、北米で引き合いが強い。
地域別では、アジアが58.7%(171.2億円)と北米27.2%(79.3億円)で2大市場を形成している。それに続くのがヨーロッパだが、輸出額では前年度の31.8億円から23.4億円に減少した。
海外でアニメの引き合いが強いのは、登場人物がアニメーションキャラクターになることで、グローバルで受け入れ易いとの理由が考えられる。コンセプトや制作手法のみを売るフォーマット・リメイクも同様の効果があると言える。
毎年、集計される「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2016年度)」だが、調査対象を放送事業者と一部アニメ製作会社に限っていることから、他業種で手掛ける輸出の数字をカバーしていない。このため実際の輸出金額は、さらに大きいと見られる。
総務省はこうした状況を念頭に、今回はこれまでと異なる対象に拡大したアンケート調査も実施している。製作プロダクション、ビデオ・レコード会社、広告代理店、商社、業界団体など29企業・団体にもアンケートを送付、さらに収入項目に「配信事業者向けの新規制作・配信契約」、「海外企業からの制作受託」、「海外作品の出資配分」、「国際共同制作での相手方出資額」、「海外でのイベント興業」、「自社販売のグッズ」を加えた。
これらの総額は515.9億円(暫定値)としている。従来方法の調査より3割程度大きな金額となる。ゲーム化権も含めて、放送コンテンツの海外輸出はこれまで考えられたよりもだいぶ大きいと言えそうだ。
放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2016年度)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu04_02000088.html