アニメスタジオのピーエーワークス、電子書籍レーベル「P.A.BOOKS」スタート

マンガ

 富山県に本社構える有力アニメ会社ピーエーワークスが、小説でのオリジナル作品創出に乗り出した。しかもデジタル分野に特化するという。
 2018年4月20日、ピーエーワークスは電子書籍専門レーベル「P.A.BOOKS」のスタートを発表。2018年5月に第1弾として、2008年の人気テレビアニメシリーズ『true tears』の小説版刊行する。ノベライズを藤本透が担当、表紙と挿絵はアニメのキャラクター原案も務めた上田夢人が描く。
 ピーエーワークスによれば、スマホ、タブレット、PCなどで時とデバイスを選ばず、いつでもどこでも新しい物語に触れられるサービスになる。作品はピーエーワークス制作のオリジナルアニメの電子小説などを予定している。

 ピーエーワークスは、プロダクション I.G出身の堀川憲司氏が2000年に設立したアニメーション制作会社。国内の主要アニメスタジオが東京近郊に集中するなかで、富山県南砺市に本社を持つ異色の存在だ。2008年の『true tears』で制作の主体となる元請制作をスタート、以降は数々のヒット作を世に届けてきた。
 もうひとつ異色なのは、原作から自社が手がけるオリジナル企画を得意とすることだ。2010年の『Angel Beats!』、『花咲くいろは』、さらに『TARI TARI』、『SHIROBAKO』と話題作も数多い。こうしたオリジナル志向が今回の「P.A.BOOKS」にもつながったと見られる。

 レーベル開始においては、アニメ会社ならではのアイディアも多い。作品は『true tears』小説版に続き、6月リリース予定が『クロムクロ 秒速29万kmの亡霊』、7月リリース予定が『続 TARI TARI(仮)』となる。ピーエーワークスの人気シリーズからのスピンオフである。『クロムクロ』はアニメのシリーズ構成の檜垣亮、『続 TARI TARI』は橋本昌和監督が自ら執筆する。ファンは盛り上がるだろう。
 さらに「P.A.BOOKS」の特長は紙の書籍でなく、電子書籍専門レーベルとしたことだ。スマホやタブレットの利用を念頭に、気軽に読める小説を短い話数単位、隔週ごとでのリリースを予定している。週ごとにエピソードを積み重ねていくアニメ的な手法が取り入れられている。
 また作品は、国内の主要電子書籍サイトを広くカバーする。ファンがいま利用しているサイトで読めることを目指す。
 
 近年、アニメビジネスの活況のなかで、アニメーション制作会社が、自身のオリジナルコンテンツを強化する動きが盛んになってきている。プロダクション I.GなどのIGポートグループや京都アニメーションは、公募によるコンテストを実施、作品発掘とクリエイターの囲い込みを目指す。小説も重要な分野だ。
 またサンライズはウェブ上にオリジナルのマンガや小説を連載する「矢立文庫」を展開している。自社コンテンツを活用するのは、ピーエーワークスと同様だ。原作づくりにより目を向けるスタジオの動きが、今後アニメ業界で大きなトレンドに成長しいく気配だ。

「P.A.BOOKS」
http://www.pa-works.jp/pabooks/

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