総合エンタテイメント企業のカドカワが2月8日に2018年3月期第3四半期の決算発表をした。このなかで利益の大幅な減少が明らかになった。第3四半期までの連結売上高は1518億7500万円(1.0%増)と前年並みであったが、出版・映像を中心とするKADOKAWA、そしてウェブサービスを中心とするドワンゴいずれもが大型投資を続けており、利益の減少が際立った。
KADOKAWAの投資は、所沢に本社機能、工場、エンタテイメント施設を築く所沢プロジェクトが大きい。2018年は通期で90億円、19年、20年は各80億、21年には150億円と4年間にわたり400億円の投資を予定する。今後も投資負担は続く。
一方ドワンゴは、コンテンツ配信プラットフォームniconicoの新バージョン、機能改善や新機能付加を予定する。こちらは今年度、さらに次年度までを予定する。いずれも先行投資期間は利益率が抑えらそうだ。
ウェブ事業はシステム投資に加えて、売上高も減少している。第3四半期までの売上高は223億2000万円(4.9%減)、営業利益は1億3900万円(94.1%減)だった。
有料課金のプレミア会員が前年同期の252万人が214万人に減少し、ニコニコチャンネルの60万人から66万人の増加でもカバー出来なかった。月間アクティブユーザーは919万人から897万人に、日間アクティブユーザーは331万人から298万人に減少している。こうしたことがプラットフォームへの大きな投資につながっており、機能向上で巻き返しを目指す。
出版事業は売上高は829億9600万円(0.5%増)、営業利益は38億200万円(38.2%減)である。昨年あった映画『君の名は。』関連書籍の変動減があったが、電子書籍・雑誌の堅調が売上げ支えた。一方で所沢プロジェクトのための準備費用などから利益が減少した。
映像・ゲーム事業は『ARK: Survival Evolved』のヒットがあったゲームが好調だった。しかし、こちらも映画『君の名は。』の反動があった映像が不調で、減収となった。また利益面でも赤字に転落した。
全体の売上げを見れば、カドカワの決算は決して悪くない。バランスのとれた事業構造で、新分野が不調な事業をうまくカバーしている。
一方で、成長分野として期待されてきたウェブ事業の失速と、そのウェブ事業と出版事業での投資負担が懸念事項だ。デジタル時代に対応する大胆な投資が、大きな成果を生むのかがカドカワの今後の成長の鍵になりそうだ。