エンタテイメント大手のカドカワは、5月10日に2018年3月期の決算を発表した。連結売上高は2067億8500万円(0.5%増)と前年並みだったが、利益面の落ち込みが大きく厳しい決算となった。営業利益は31億4400万円(62.6%減)、経常利益37億1600万円(49.8%減)、純利益は10億3800万円(82.0%減)。
カドカワの事業は、ドワンゴを中心としたWebサービス、KADOKAWAを中心とした出版、さらに映像・ゲームの主要3部門から構成される。このいずれもが前年比で利益を減少させている。なかでも利益を39億円減らし赤字に転落したWebサービス事業がきつかった。
■ 定額会員課金から都度課金へ、ビジネスモデルの転換を目指す
Webサービス事業の売上げは290億2300万円(7.2%減)、営業損失が10億6700万円である。ライブでの増収があったが、niconicoやモバイルサービスの有料会員の減少が響いた。さらにポータルサイトの新サービス開発投資が続く一方で、期中での投入が出来なかったことから赤字となった。
主力のniconicoプレミア会員は2016年末の256万人から、18年末には207万人まで減少している。2019年3月期もスタートは減少が続くと見るが、夏休み前の新サービス導入で反転を狙う。期末には201万人を想定している。さらに投げ銭システムの導入、ゲーム強化で都度課金ビジネスでの拡大を狙う。
■ 電子書籍事業、海外向けサービスのさらなる拡大へ
出版事業は売上高1126億円(0.3%減)、営業利益60億円(28.1%減)。前年に大ヒットになった『君の名は。』関連書籍の反動があったほか、2020年の稼働を目指す所沢の新製造・物流拠点への投資が増えていることが利益を押し下げている。18年3月期は約71億円の設備投資があったが、19年3月期はさらに約47億円を投入する。設備投資は21年3月期まで続き、総額246億円を予定している。
一方で電子書籍関連事業が成長を続けている。18年3月期の売上げは、前年比8%増の228億円。BOOK☆WALKERが17.4%増、他社ストアへの取次である外販事業の15.1%増と好調だ。
電子書籍事業今期も252億円と10%超の伸びを見込む。21年3月期までに320億円を予測する。なかでもカギとなりそうなのが、海外向け事業である。18年3月期は台湾BOOK☆WALKERが前年比3倍超、英語サービスのBOOK☆WALKER Globalが4倍超と急成長している。Globalではラノベがとりわけ人気だとしている。
今期は海外メディアとの提携による送客アップ、海外向けIPを立ち上げる予定だ。台湾でさら2.4倍、Globalで1.7倍を狙う。
■ アニメは映画配給、映像ソフト、ライセンスで好調
映像・ゲーム事業も『君の名は。』の反動があった。一方で大作『空海−KU-KAI− 美しき王妃の謎』、話題作『ナミヤ雑貨店の奇蹟』があり売上は増加した。売上高は474億4000万円(6.8%増)、営業利益28億7400万円(13.2%減)。
アニメでは『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』『劇場版 Fate/kaleidliner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』映画配給、映像ソフトの『劇場版 艦これ』が貢献した。『Re:ゼロから始める異世界生活』、『オーバーロードⅡ』、『ソードアート・オンライン』のライセンス収入もあり好調であった。映像全体の増収増益につながった。