中国版コミケ「COMICUP」レポート 日本アニメ・マンガも巻き込んでファンパワーで急成長

COMICUP

■ 同人創作がメインの「COMICUP」とは

 2017年12月に中国・上海新国際博覧中心で開催された「COMICUP21」というイベントに訪れる機会があった。年2回開催される「COMICUP」は、数ある中国のカルチャーイベントの中でも異色の存在だ。大型イベントは大手メディアや行政などが主催することが多い中で、ファンベースで誕生した歴史を持つからだ。会場には数え切れない同人創作の個人サークルが机を並べる。その様子は日本のコミックマーケットさながらだ。
 2017年でスタートから10年、2日間で16万人を動員するほどのビッグイベントになった。急成長する中国のアニメ・マンガ・ゲームシーンを象徴する存在である。会場から溢れた熱気、そしてそこから垣間見えた中国のアニメ、マンガなどのファン事情をレポートする。

 「COMICUP」を印象づけるのは、やはり同人関連の出展が多いことだろう。中国版コミケとまずは紹介したが、実際は日本のコミックマーケットとは異なることが多い。
 ひとつは企業との関係だ。会場となる上海新国際博覧中心はアジア有数の国際展覧会場だが、イベントで使用するのはその1/4程度の4つのホールである。このうち2つが企業エリアで、同人エリアは残りの半分。企業の存在が既に大きくなっている。
 集客力の大きなイベントを積極的に活用したい企業サイド、そしてまだまだスペース的にも成長の余地がある「COMICUP」との利害が一致しているのだろう。

■ 日本アニメ、マンガも、スマホアプリゲームに存在感
 
 企業エリアでは、昨今の中国のトレンドがよく現れている。まず目についたのはファン向けのアニメ動画配信のビリビリの特設ステージ。ここからネット向けのライブ中継を続ける。大きな物販コーナーも設けており、ファンとの接点を積極的に求めるビリビリらしい。
 スマホアプリゲームのプロモーションの多さが目立った。また日本でも大人気の『アズールレーン』は大きなブースとコスプレイヤーを用意していた。中国でも人気の『Fate/Grand Order』も多くの人を集めている。
 日本作品は存在感があり、見慣れたキャラクターやビジュアルも多かった。なかでも1月放送開始の『ラーメン大好き小泉さん』がラーメン屋に模したブースを早くも出していたのが興味深かった。中国の日清食品とのタイアップも決まっているのだという。
 日本アニメの海外での宣伝やプロモーション、タイアップは、これまで日本とほぼ同時の配信に較べると遅れがちとされてきた。しかし『ラーメン大好き小泉さん』では、放送(中国では配信)前からがつりと製作委員会と組んで番組を盛り上げる。
 中国独自の作品の豊富さも、驚かされた。しかも日本アニメ・マンガから影響を受けた作品は、ほとんど日本と中国の区別が出来ない。この分野でも中国が確実に成長し、マーケットを広げているようだ。


 
■ コミック・小説よりグッズが主流、中国の同人活動

 同人エリアは小さな机に手作りのアイテムが並べられ、日本の同人イベントを彷彿させる。こんなブースが各日約1500も設けられている。
 しかし、ここでも中国ならでは特長がある。同人エリアの出展は個人だけでなく、小規模な企業も可能で、さらに1サークルでいくつものブースを確保することが可能だ。このため個人の楽しみと、もっぱら商売の業者が同居している。また売買で現金のやりとりはあまりなく、デジタル決済が主流というのも中国らしい。

 また販売アイテムは、日本での同人創作とのイメージとはやや異なり、二次創作を含むキャラクターなどのグッズが主流となっている。コミックや小説の占める割合は意外に小さい。ネット上のデジタルマンガが盛んなので、わざわざ紙で印刷し発表、販売をする必要が薄いのかもしれない。
 そうしたなかで主催者は同人活動をサポートする試みも行っている。「千人釡絵大交換会」とタイトルしたエリアは、参加者がその場で描いた絵を交換するというユニークな試みだ。実際に描いている様子も見てみたが、これが驚くほどうまい。
 ペンタブレットのワコムも実演販売をするなど、絵を描くことに対するニーズは大きいようだ。これがストーリーマンガの創作にどれだけつながるか気になるところだ。
 同人コーナーには、DCコミック系の大きな一画があったり、中華圏の人形劇・布袋劇も巨大な勢力を誇る。ジャンルの広がりはサブカルチャー特有のカオスな雰囲気が感じられ、ここはコミケとよく似ている。

■ 「COMICUP」の参加者は女子優位?

 ところで「COMICUP」に参加しているのは、どんな人たちなのだろうか? ひとつは圧倒的に若者世代が多いこと。幅広い世代が参加するコミケに対して、若者=新世代のイベントと印象が強い。
 また会場を見渡すと女性の姿が多く見られる。半数、あるいはそれ以上だろうか。実際に現地の人によれば、会場での活動も女性のほうがアクティブだという。確かに、同人グッズではBLも含めて女性向けが多かった。
 これはアニメ・マンガのファンに女性が多いというわけでもないようだ。例えばアニメ配信で利用の多いビリビリのユーザーは男性が多数だという。男性はネット上のデジタル消費が多く、そこで満足することが多い。リアルなイベント活動に至らないこともあると、これも現地の説明だ。
 確かなのは、ネット上の動向だけでは中国のアニメファンの活動は分からないし、同様に「COMICUP」からだけでも全てを語れないということだ。ファンの姿は一様でなく、多くの側面がある。その多様なニーズに応えるのが、中国のポップカルチャーの発展の原動力なのだろう。

 今回の上海訪問では、数年前にくらべて町が落ち着いてきたように思えた。市中心部は開発し尽くして、成長という点では達成感がある。アニメ配信のプラットフォームも急激に集約が進み、ビジネスの勝敗も見えてきた。全体に成長から安定に移っている。
 そのなかで「COMICUP」は、群を抜いた成長性を感じさせる。同人・ファンイベントの文化はまだまだ始まったばかりなのだ。こうした活動から新たなクリエイティブが生まれるのか、中国の次の発展の鍵はこんなところにあるのかもしれない。

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