インターネットでファンからの支援を募集して、様々なプロジェクトを実現する“クラウドファンディング。日本のアニメ業界で初めて注目されたのは、2012年にプロダクション I.Gが米国のKickstarterで実施した湯浅政明監督の『キックハート』プロジェクトだ。
その後、劇場アニメ、テレビシリーズに広がった『リトルウィッチアカデミア』、PV制作が映画公開につながり大ヒットとなった『この世界の片隅に』、テレビシリーズが放送中の『Dies irae』といった成功が次々に現れている。クラウドファンディングの利用は、もはや一般的な風景になった。
登場から5年経った2017年、アニメ界隈でクラウドファンディングはどのように活用されているのだろうか。2017年1年間に募集された、アニメ関連のクラウドファンディングをまとめて、その傾向を探ってみた。
2017年の大きなニュースは、アニメ関連で初めて1億円を突破する支援金を集めたプロジェクトが登場したことだろう。同人誌発の人気ビジュルノベル『ネコぱら』のOVAでのアニメ化を、Kickstarterでグローバルに募ったところ、963,376ドル(約1億850万円)もの支援が集まった。
これは『Dies irae』が持っていた9656万円という日本アニメ分野での記録を超えるもので、史上最高金額にあたる。金額だけでなく、9122人という人数も驚異的である。
アニメ化を目的とした大型プロジェクトは、他に『リトルバスターズ!』発売10周年のスピンオフ企画である『クドわふたー』劇場アニメ化プロジェクトがある。こちらは3934人から7804万円を集めた。このほかは山本寛監督の『薄暮』(2136万円)、東北ずん子アニメ『ずんだホライずん』(1809万円)、2.5次元アイドル大森杏子アニメ化(1028万円)、碧志摩メグアニメ化(570万円)などがある。
ただし、『ネコぱら』を初めとするアニメ制作そのものを目的とするクラウドファンディングは必ずしも多くない。アニメ制作には数千万円から、時には億単位の制作費用がかかるためハードルが高いためである。そこでアニメ化実現に向けたPV制作や、アニメ化後の新たな展開のプロジェクトも多い。
PV制作ではアニメ会社のAICが2度にわたり実施した新作企画がある。すでにある作品では米国で実施された『ARIA THE ANIMATION』シリーズ全作品の英語吹替えとHDの実現。2648人から支持を受け日本円で6700万円以上が集まっている。
もうひとつクラウドファンディングならの特長は、アニメーション作家のプロジェクトである。クラシック曲「四季」のアニメーション化では、アンナ・ブダノヴァ、プリート&オルガ・パルン、和田淳、テオドル・ウシェフとトップクラスの作家が参加する。111人から561万円が集まっている。
アニメーション作家の作品は、商業アニメより予算規模が小さいこともあり、支援金で全編を制作することも可能だ。よりクラウドファンディング向きと言えそうだ。アニメーション作家のプロジェクトでは村田朋泰『陸にあがった人魚のはなし』サポーター、松浦直紀のオリジナル短編アニメーションがあった。
クラウドファンディングでは様々なプラットフォームが利用されている。Kickstarterはこれまで、支援金額の大きなプロジェクトが多いが、海外のサイトということもあり、数自体は多くない。むしろアニメ系ではCAMPFIREの人気が高い。Motion Galleryはアニメーション作家系に特徴があり、Makuakeは草の根活動のプロジェクトが目立つ。
クラウドファンディングのプラットフォームは特長に合わせて選ぶ、複数並列だ。今後は勢いを増しているCAMPFIRE の寡占に向かうのか、17年後半に日本語化され日本からも使い易くなったKickstarterの利用が増えるのかが、注目点になる。