大手代理店の電通が、VR(Virtual Reality)を活用したライド型のエンタテイメントビジネスに乗り出す。2017年12月22日、ライド型VRソフトの企画・プロデュース会社であるBrogent Japan Entertainment株式会社(BJE)に出資したことを明らかにした。
BJEは台湾に本社を持つBrogent Technologies Inc.(BJT)と出版大手の講談社が、2016年8月に合弁で設立していた。このビジネスの枠組みに電通が加わる。
BJTは2001年に台湾で設立、テーマパークなどでみられるライドアトラクションの分野からアプローチする。高度な制御技術を駆使したライド型VRアトラクション機器を開発・製造する。現在、世界的に注目を浴びるVRの技術を背景に急成長、2011年には台湾株式市場に上場している。
独自開発の「BGTマシン」は、多人数のユーザーを同時に搭乗させるが強みになっている。技術の高さとコスト感を両立させる。現在までに北米やヨーロッパで導入されており、今後は中東や中国でも稼働をスタートするなど今後のさらなる成長が期待される。
講談社は、このBGTマシンの可能性に目をつけた。講談社の手がけるマンガやアニメを活用したVRソフトの開発、BGTマシン用の市場拡大を目指す。現在までに、すでに山梨県の富士急ハイランドと台湾で『進撃の巨人』のアトラクションが稼働している。
今回ビジネスに参加する電通は、BGTマシンを新たな導入する企業を開発し、ライド型VR事業の拡大を目指す。国内だけでなく、海外のアミューズメントパーク運営企業、ショッピングモールなどのリテール企業もターゲットだ。
講談社はBJTとは別に2017年10月に、ポリゴン・ピクチュアズと共にVRコンテンツを開発する講談社VRラボを設立している。こちらは国内有数のCGスタジオと共に、VRのソフトを創り出す。BJEの持つハード機としてのBGTマシン用、そして講談社VRラボのコンテンツとの相互補完が期待出来る。
コンテンツのデジタル化が急速に進む中、総合出版社が得意としてきた紙での出版市場は次第に縮小しつつある。ビジネスの成長のために新たなビジネス領域が必要とされている。
講談社はVR分野にその可能性を見つけ出す。出版社とVR、やや意外な組み合わせだが、それを実現するのがマンガやアニメビジネスで培ってきたコンテンツ活用のノウハウである。異業種参入の結果はどのような成果をもたらすのか、様々な業界から関心を呼びそうだ。