興収1位は「君の名は。」2017年北米公開された日本アニメイベント上映が増加

米国興行2017

 2017年も暮れとなり、北米の映画興業の大勢も見えてきた。日本の劇場アニメも北米で上映されており、その中で最も興行収入が多かったのは新海誠監督の『君の名は。』だった。米国の映画興業情報のBox Office Mojoによれば、『君の名は。』は2017年4月7日に公開、興行収入は501万7246ドル(約5億6000万円)である。
 日本での250億円超、中国の90億円超、韓国の約30億円などに較べると、その規模は小さく感じるかもしれない。しかし、一般的な全米公開規模の1/10以下、311スクリーン数、配給は日本アニメ専業のファニメーションであることを考えれば、むしろ大健闘と言える。

 この数字は、これまで米国公開された劇場日本アニメの歴代11位にあたる。上位にはブエナビスタ(ディズニー)配給のスタジオジブリ作品、ワーナー配給の「ポケットモンスター」シリーズなどが並ぶ。
 独立系配給は、9位でやはりファニメーションが手がけた『ドラゴンボールZ 復活の「F」』のみ。『君の名は。』は、スタジオジブリ、キッズ向け以外では過去最高の数字となった。

 2位には、3月9日公開の『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の152万2976ドル(約1億7000万円)が入った。こちらはイレブンアーツ(Eleven arts)が配給した。同社も北米の映画配給では小規模だ。
 ここ1、2年、映像配信プラットフォームやアニメイベントでの人気が話題になることが多い日本アニメだが、映画興業の世界では日本アニメは依然、ニッチな分野だ。大衆的な動員を見込めないとみられている。
 ブエナビスタ(デジズニー)やワーナーといった6大メジャーの配給は勿論、各社のより規模の小さなセカンドラインの配給にも喰い込むことが出来ていない。これがより大きなヒットを狙う際の壁になっている。映画興業が次第に拡大するアジア各国とは対照的だ。
 
 それでもここ数年、北米における日本の劇場アニメ市場は大きな変化を見せている。それはイベント上映での作品数拡大だ。全国公開ではなく、1日から数日の期間を定めて、全米(カナダを含む場合もあり)数百館規模で実施する日本ではODS(other digital stuff)と呼ばれるタイプの上映である。
 ファニメーションやイレブンアーツのほか新興のアゾランド(AZOLAND)などが積極的だ。2017年は『進撃の巨人』から「Fate/stay night [Heaven’s Feel] 第1章』、『ノーゲームノーライフ・ゼロ』など確認できたものだけで10作品を超える。
 
 デジタルシネマの普及、熱心なファン層の存在がイベント上映の背景にある。また昔に比べて映像ソフトの売上の伸びが期待出来ないなか、期間とコストを抑えて、多くのファンを動員するイベント上映はビジネスとしても見逃せなくなっている。
 2017年はさらに新しい動きもあった。ひとつはイベント上映を使った旧作の上映だ。ファニメーションが実写版の公開と合せた『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、近年のリバイバル人気に合せたビズメディア(VIZ Media)の『美少女戦士セーラームーンR: The Movie』といったものだ。世界の良質のアニメーション映画の配給に定評のあるGKIDSも、『風の谷のナウシカ』、『ルパン三世 カリオストロの城』といった宮崎駿作品を継続的に上映する。
 またポケモカンパニーが『ポケットモンスター キミにきめた!』、コナミが『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』が上映するなど、これまで劇場映画に縁の薄かった企業の参入もみられる。2018年は東映アニメーションも『デジモンアドベンチャー tri.』で、イベント上映に進出する。

 一方でこれらの作品が劇場公開なのか、イベントなのかの線引きは難しい。Box Office Mojoでも、興行収入が記録されている作品と、ないものがある。
 今回参照として、2017年の興収ランキングをまとめたが、数字が不明な映画が多く、実際のランキングとは一致しない可能性が大きい。例えば、一般公開でも『この世界の片隅の』の数字が報告されていないなど、ニッチ市場ならではの混乱がみられる。
 こうした混沌のなかで、今後、どのように広がっていくのか。日本の劇場アニメの北米市場は、今後も見逃せない分野だ。

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