国内大手放送局の一角であるTBSが、アニメーション企画・制作を通じて、アニメ事業を強化する。2017年12月26日にグループの持株会社東京放送ホールディングス(TBS-HD)を通じて中堅アニメ制作会社のセブン・アークスグループを完全子会社化すると発表した。
セブン・アークスグループは、「魔法少女リリカルなのは」シリーズなどの人気アニメの制作で知られている。有限会社アークトゥールスを持株会社に、企画・版権管理のセブン・アークス、アニメーション制作のセブン・アークス・ピクチャーズで構成されている。
TBS-HDは、グループのオーナーである上村修氏から全発行株式を取得する。譲渡価額は明らかにされていない。TBSグループがアニメ制作会社を完全子会社にするのは、今回が初だ。
TBSグループは、これまで中長期戦略のひとつとしてアニメ事業の強化を挙げてきた。セブン・アークスグループの買収は、その一環となる。アニメの制作、流通・版権ビジネスを拡大する。さらに、動画配信事業でのアニメの活用を進める。
TBSグループは25日に、TBS-HDが筆頭株主となるプレミアム・プラットフォーム・ジャパンの月額定額課金の動画見放題新サービス「Paravi (パラビ)」を発表したばかり。動画配信サービスの人気アニメでのコンテンツ強化も視野に入っていそうだ。
セブン・アークスの子会社化後の最初の大きな作品は、2018年4月より放送開始するテレビアニメシリーズ『されど罪人は竜と踊る』になる。小学館「ガガガ文庫」で刊行される人気のライトノベルをセブン・アークスがアニメーション制作する。TBSテレビ、BS-TBSにて放送予定だ。
近年、アニメは放送番組として海外輸出が拡大している。また映像だけでなく、作品から派生する関連市場の大きさから、大手放送局や代理店などがアニメ制作会社をグループ化するケースが増えている。アニメ制作が急増するなかで、安定して自社企画のアニメを制作する体制を確保することも狙いのひとつとみられる。
放送局ではテレビ朝日がシンエイ動画を、日本テレビがタツノコプロ、マッドハウスをグループ会社にしているほか、2014年にはフジテレビが「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズで知られるデイヴィッドプロダクションを完全子会社化した。2016年には深夜アニメの強化を掲げるADKによるゴンゾの買収もあった。また2017年9月に大手パッケージメーカーのバンダイビジュアルが「ガールズ&パンツァー」シリーズのアクタスを子会社化したばかりだ。
アニメ制作会社にとっても大手メディアのグループ会社になるメリットは少なくない。財務面でのバックアップが期待できるほか、中小規模の制作会社では負担が大きかったアニメの版権事業の拡大も目指せる。
国内のアニメ制作会社は数多く、過当競争状態ともされている。今後もこうした動きは続くかもしれない。