「VR映画」時代が始まるか? クラフターが東映、VAIOと新事業スタート

VR Cinematic Consortium

 映像企画・制作のクラフターが、VR(バーチャル・リアリティ)を用いた新時代の映像プロジェクトをVAIOや東映と共に取り組むことになった。2017年12月19日、3社は共同プロジェクト「VRCC(VR Cinematic Consortium)」の立ち上げで合意したことを明らかにした。
 VRCCは、ハードウェア技術と劇場興行(映画館)、作品を組み合わせることで、これまで以上に手軽にVR映像を楽しむことが出来る。映画館を活用し、これまでにない多人数同時鑑賞型のVR映画興業となる。2018年3月から試験営業を開始する予定だが、恒常的なVR映画の興業を目指すと野心的だ。

 仮想現実と称されることも多いVRは、CGを多用した仮想的な空間があたかも存在するかのように感じられる技術である。その活用範囲の可能性の大きさは長らく指摘されていたが、技術の急速な進展から、ここ数年で急激に関心が高まっている。
 エンタテイメント分野への応用も活発だ。表現手段の新しい可能性、市場拡大も期待されている。しかし、これまではゲームやアミューズメントパークなどで斬新な試みが次々に登場する一方で、映像分野での活用は意外に進んでいない。VR機器が個人で購入するにはまだ高額であること、体験できる場所が限られていること、コンテンツが充分でないことが理由だ。

 VRCCは、こうした課題に挑戦する。PC開発で技術を築き上げてきたVAIOが技術を、アニメーション制作で定評があるクラフターがコンテンツを、東映がシネコンへの配給を通じて上映の場を提供する。
 コンテンツを担当するクラフターは、『ふうせんいぬティニー』やCGアニメ『ムーム』といった作品で知られている。新しいアニメーション技術の導入やビジネスモデルの導入にも積極的に取り組んでいる。今回も新時代の映像VRの可能性に挑戦する。スタート時の作品には、人気アニメやアーティストの映像を想定しているという。3DCGのアニメーションを活用したもので、タイトルは2018年2月に発表する。

 東映にとってもVRCCは、新たなビジネスチャンスを感じさせる。今回の取り組みでは、コンテンツ制作は外部からも受け入れ、作品の公開劇場も広く募るとしている。
 映画配給・ビジネスモデルをVR映像に応用するというわけだ。将来的に規模が大きくなれば、VR専門の劇場配給のビジネスモデルを構築できる。VR映像普及の起爆剤になるのか? 新たなビジネスの可能性は? 大きな注目を集めそうだ。

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