松竹と東映、日本を代表する老舗の映画会社2社が、映画宣伝の有力企業フラッグに出資し、資本業務提携を締結した。2024年7月31日、3社はフラッグが実施する第三者割当増資を松竹と東映が引き受けて、資本提携したことを明らかにした。割当増後、松竹と東映はフラッグの発行済株式のそれぞれ約7%を保有する。
出資の目的は、3社で協力して「シネマDXプロジェクト」と呼ぶデジタル分野での映画マーケティングを推し進めることだ。3社は共同で顧客データを活用したデジタル広告プラットフォームを開発する。
プロジェクトの背景には、現在、映画業界でヒット作とそれ以外の作品で興行で大きな差がでている傾向が強まっていることの懸念がある。作品の多様性と市場の持続可能性を維持するために、これまでよりも効率的で効果的な映画のマーケティング手法が必要だとする。
そこで映画配給と映画興行、さらに宣伝担当会社の情報連携の仕組みを確立することとした。顧客データの活用と分析により効率的な観客へのリーチや宣伝効果の測定をする。
フラッグは2004年に設立、インターネットなどのデジタル分野での映画宣伝を得意としてきた。これまで16年間で1000本以上の映画・エンタメテイメント作品のデジタルマーケティングを担当している。アニメ映画のデジタルメディア向けの宣伝も多く手がけてきた。このノウハウをいずれも国内配給と劇場運営の大手である松竹と東映と結びつける。
松竹はグループで全国251スクリーンを保有し、東映も175スクリーンを抱える。両社で426スクリーンの劇場の顧客データが活用できる。フラッグは自社の持つデジタルマーケティングのノウハウを顧客データを活用したデジタル広告プラットフォームの開発・運用で活かす。プラットフォームは、他社にも提供する予定で、2027年に3億円以上の取扱高を目指す。
今回の取り組みは、近年の映画マーケティングの変化に対応したものとも言えそうだ。現在、映画観客が作品を知り、情報を得る場所が、これまでのテレビ広告、新聞や雑誌の記事・広告などから、ウェブメディアやSNSに移行している。しかし映画会社の多くは、この分野の知見は十分でない。そこでデジタル分野で知見をもつ会社と手を組むわけだ。
また映画会社大手の東宝は、昨年(2023年)に映画分野のデジタルマーケティングに定評のあるガイエを子会社化している。松竹と東映は、これに対抗する戦略も迫られていた。そこで両社が手を組み、さらにフラッグを巻き込むことでデジタルマーケティングの開発、さらに人材育成も進める。