長年、ハリウッド実写化の噂はあってもなかなか実現しない日本作品の代表ともなってきた『銃夢』がいよいよ映画化に向かって動き出した。すでに監督にロバート・ロドリゲス、ヒロインのアリータ(ガリィ)役にローサ・サラザールが決まったと報道されたが、さらにもうひとりの重要人物イド役の配役の選定に入っているようだ。
米国の有力エンタテイメント誌ハリウッドレポーターはスクープとして、製作側がイド役としてベテラン俳優のクリストフ・ヴァルツと交渉中であることを伝えている。ヴァルツはオーストリ出身で、『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』のリュシュリュー卿、『ターザン:REBORN』や『007 スペクター』では敵役を務めている。2度にわたる米国アカデミー賞助演男優賞、カンヌ国際映画祭男優賞の受賞などその実力には定評がある。
『銃夢』は木城ゆきとの描くサイバーSFで、スクラップの山から発見された戦闘用サイボーグの少女ガリィを中心に空中都市ザイムに支配された世界を描く。ガリィを発見し、修理するサイボーグのための医師イドが、今回ヴァルツが交渉している役どころである。
一方、ガリィ役は、『メイズ・ランナー』シリーズのブレンダ役などで活躍するローサ・サラザールに決まったと伝えられている。
『銃夢』は1993年にOVAとしてアニメ化されている。米国での人気はこれがきっかけだ。英語版『Battle Angel Alita』がカルトな人気を博した。原作マンガと併せて、米国の多くのクリエイターに影響を与え、その一人が世界的な大ヒット作『タイタニック』でお馴染みのジェームズ・キャメロン監督である。すでに2004年からキャメロン監督によるハリウッドの映画化企画がたびたびメディアに報じられてきた。
しかし、キャメロン監督が革新的な映像を目指したことから巨額の製作費が予想されたことから制作着手をすることが出来なかった。一方で製作を優先した『アバター』がメガヒット、その続編の製作に入ることになったことから『銃夢』の映画化はさらに延期された。
ここにきて、新たに企画が動き出したのはジェームズ・キャメロンが自ら監督することを断念、自身はプロデューサーに回り、監督を『スパイキッズ』や『シン・シティ』のロバート・ロドリゲスにしたためである。ハリウッドレポーターによれば、映画公開は2018年7月を目指している。
製作体制の状況変化に加えて、2010年代になり再び日本由来のコンテンツの再評価の流れも、企画推進を後押ししている。『トランスフォーマー』シリーズ、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『GODZILLA ゴジラ』『バイオハザード』シリーズなどの日本のコンテンツを源流とするヒット作、話題作が相次いでいるからだ。
さらに2017年には実写版『攻殻機動隊』が公開予定、Netflixオリジナル映画としてハリウッド実写版『DEATH NOTE』も制作中だ。製作の噂が最初に報道されてから12年目を迎えたハリウッド実写版『銃夢』のいよいよの実現が待たれる。