国内の有力映像配信プラットフォームである「Hulu(Japan)」に、国内外の有力企業が資本参加することになった。「Hulu(Japan)」を運営するHJホールディングスは2017年7月に第三者割当増資を実施、これをHulu,LLC(米国)、ヤフー、東宝、讀賣テレビ放送、中京テレビの5社が引き受けた。
HJホールディングスは2014年4月に、当時Hulu,LLCが運営していた「Hulu Japan」の事業承継を目的に、日本テレビ放送網が100%出資で設立した。設立から3年あまり、外部資本を受け入れることで新たな成長を目指す。増資額や各社の出資比率は、発表されていない。
「Hulu Japan」は、米国の大手映像配信プラットフォームのHulu,LLCが日本進出として2011年にスタートした。当時はまだ珍しかった毎月定額課金で豊富なラインナップが見放題のサービス提供した。しかし有料会員数は伸び悩み、2014年4月に事業資産をHJホールディングスに譲渡することで、Hulu,LLCは日本事業から撤退した。
その後、HJホールディングスは順調に有料会員数を増加させ、現在は155万人を超える。事業は赤字が続くが、国内有数の映像配信プラットフォーに成長している。Hulu,LLCはこうした成長性に目をつけて、HJホールディングスに出資することで「Hulu(Japan)」の経営に関わることになる。
Hulu,LLCの事業参加は、日本テレビには都合がいい。映像ファンに認知度の高い「Hulu」のブランドは、いまでは欠かせないものとなっている。ライセンス許諾で使用することは可能だが、ビジネス上は資本関係も含めて誤認を生みやすい。Hulu,LLCが出資することでこうした齟齬も解消出来るし、「Hulu」が得意とする海外ドラマの新作供給を安定的に受けることも可能だ。
さらに今回新たに出資者に加わった、ヤフー、東宝、讀賣テレビ放送、中京テレビの存在も大きい。国内最大のネットポータルであるヤフーと連携することで、インターネット上の潜在的なユーザーへのリーチが大きく広がるのは間違いないだろう。
国内最大手の映画会社である東宝の事業参加が、配信番組の充実に厚みを持たせるのも予想される。東宝は配信市場で人気の高いアニメ作品で近年ますます大きなプレイヤーに成長しつつあるのも見逃せない。
また縮小傾向にあるとはいえ、2017年3月期でも依然17億円の赤字を計上するHJホールディングスの資本増強もポイントだ。事業の基盤となる有力タイトルの獲得金額は拡大しており、資本力はビジネスの行方を決める重要な要素となっている。ライバルに対抗するには、東宝、ヤフーといった大手企業との連携は大きな力となる。
一方で、今回の資本増強に懸念がないわけでない。日本テレビはHJホールディングスの設立当初より国内の他の放送局の資本参加も受け入れるとしてきた。しかし、テレビ朝日はサイバーエージェントと「AbemaTV」を設立、TBSは日本経済新聞やテレビ東京、WOWOWとプレミアム・プラットフォーム・ジャパンを立ち上げる。各局の独自路線は明白で、これらが全てライバルになる。
讀賣テレビ放送、中京テレビがHJホールディングスに加わったことで、今回日テレグループが強く押し出されることになった。これが他局からの番組調達にどういった影響を与えるのか、現在は判断がつかない。同様にこれまで映画業界に対して中立の立場だったが、東宝が出資することで、他の国内映画会社がどういったビジネススタンスを持つかも気になる。
それでも新たな出資の枠組みで、過当競争、業界再編は不可避とされている定額課金見放題の映像プラットフォームビジネスで「Hulu」が勝ち抜けに向けて大きく前進したのは間違いない。