くらもちふさこ「花に染む」が手塚治虫文化賞大賞に 選考経過も公表

手塚治虫文化賞

 朝日新聞社は第21回手塚治虫文化賞の受賞作と受賞者を2017年4月25日に発表した。手塚治虫文化賞は朝日新聞社が主催、一年間に発表された最も優れたマンガ作品をマンガ大4コマ・1コマを対象にした短編賞が設けられている。
 このうちマンガ大賞には、くらもちふさこ氏の『花に染む』が選ばれた。また新生賞は、雲田はるこ氏の 『昭和元禄落語心中』、短編賞は深谷かほる氏の『夜廻り猫』。受賞者に女性作家が並ぶ年となった。

 『花に染む』は2010年に連載を開始、弓道に惹かれた若者青春を描いている。繊細な登場人物の心の動きが特長だ。2016年秋に完結した。
 『昭和元禄落語心中』は、戦前から平成までを舞台に登場人物たちの落語の世界での生き様をテーマにした。こちらも連載開始は2010年。2014年からテレビアニメ化もされ、高い人気となった。
 『昭和元禄落語心中』の受賞理由について、「落語を巡る愛憎劇に高座の巧みな描写を織り交ぜた清新な表現」を挙げている。『昭和元禄落語心中』は2013年第17回でも候補に挙がっていた。二度目で受賞に輝いた。

 手塚治虫文化賞は、その独自の選考方法と選考過程を公開していることでも知られている。まず、国内約200人に書店員やマンガ雑誌編集者らにより作品を選出、これを参考に社外選考委員8人が15点の持ち点を作品に与える。これにより上位8作品をノミネート作品とする。最終選考委員会は合議により各賞を決定する。
 第21回は受賞作のほか、『クジラの子らは砂上に歌う』(梅田阿比)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)、『SAD GiRL』(高浜寛)、『トクサツガガガ』(丹羽庭)、『ど根性ガエルの娘』(大月悠祐子)、『レインマン』(星野之宣)がノミネートされていた。
 選考過程では、一次選考では『昭和元禄落語心中』は5人の選考委員から推された 『昭和元禄落語心中』が獲得点数で、他作品を大きく引き離していたことが分かる。それに続いたのが『ゴールデンカムイ』だが、「まだ連載中で、これから来る山場を見たい」との理由から受賞が見送られている。逆に3位以下、横並びの中から最終的に『花に染む』が抜け出た。
 
 手塚治虫文化賞大賞は年間の業績のほかに、マンガ文化の発展に寄与した個人もしくは団体に贈る特別賞も設けている。こちらはマンガ家の秋本治氏が選ばれた。秋本治氏は、1976年にマンガ誌「週刊少年ジャンプ」に『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の連載をスタート。2016年に完結するまで一度も休載することなく描き続けた。40年に亘る連載の完結を顕彰した。

 アワードの贈呈式は、5月31日に東京・築地の浜離宮朝日小ホールで実施される。また今回、兵庫県宝塚市(手塚治虫記念館)、東京都杉並区、豊島区(公益財団法人としま未来文化財団)、練馬区がアワードの後援をする。今後、こうした地域で受賞作家のサイン入り作品パネルなどを展示する巡回展を予定している。

第21回手塚治虫文化賞
http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/

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