2010年代に入り、国内の映像配信ビジネスが急成長している。映画、テレビ、映像ソフトに続く新たな映像プラットフォームとして注目を浴び、新規企業の市場参入も活発だ。2017年5月23日、ここに新たな大型プレイヤーが登場することが明らかになった。
東京放送ホールディングス(TBS-HD)、日本経済新聞社、テレビ東京ホールディングス、WOWOW、そして電通 と博報堂DYメディアパートナーズは共同出資して、「株式会社プレミアム・プラットフォーム・ジャパン」(仮称)を設立すると発表した。新たな映像配信プラットフォームを設立し、2018年4月を目標に有料サービスの運営を始める。
新会社は2017年7月3日に設立予定、代表取締役はTBSの高綱康裕氏、代表取締役専務は日本経済新聞出身でBSジャパンの船木隆氏が就任する。出資比率はTBS-HDが31.5%、日本経済新聞社が16.6%、テレビ東京HDとWOWOWが各14.9%、電通が14.8%、博報堂DYが7.3%になる。
筆頭株主は31.5%出資のTBS-HDだが、日本経済新聞とその持分適用法子会社のテレビ東京が合計31.5%で同率になる。代表取締役人事も含めて、今回のプロジェクトがTBSと日本経済新聞・テレビ東京のふたつのグループがリーダーシップを取っていることが分かる。
とりわけ注目されるのは、新会社の資本金の多さだろう。スタート段階で80億円もの資本金が用意されている。映像配信プラットフォームは、インフラ整備や技術開発、それに番組コンテンツの調達と多額の資金が必要となる。それに対応できる資金を用意するが、大型投資はTBS、そして日経・テレビ東京、WOWOWのプロジェクトの高い意気込みを感じさせる。
とりわけ筆頭株主で社長を送り出すTBSにとっては、新しい映像メディアでいかに存在感が発揮できるかがこれにかかりそうだ。ライバル局では、日本テレビがHuluを子会社にし、放送局系の映像配信プラットフォームで有料会員数150万人超とトップを走る。フジテレビ系のフジテレビ・オン・デマンドも有料会員数60万人だ。テレビ朝日はサイバーエージェントと手を組んだテレビ編成タイプの配信サービスAbemaTVでアプリのダウンロード数1500万超と躍進中。放送界の巨人であるNHKもインターネット同時配信参入機会を窺う。こうしたなかで出遅れ感がいなめなかったTBSが一挙に攻勢をかける。
しかし、すでに過当競争と言われる映像配信サービスで、プレミアム・プラットフォーム・ジャパンはどのように差別化し、勝ち抜くのだろうか? その鍵は今回発表された「株主各社の特色を生かしたコンテンツ」にありそうだ。具体的にはドラマ、バラエティ、スポーツ、音楽ライブ、経済報道などとしている。これを定額制で提供するとしている。
現在の定額課金見放題サービスのコンテンツの多くは、映画、ドラマ、アニメに大きく偏っている。バラエティ、スポーツ、音楽ライブ、ニュース・報道番組は少ない。AbemaTVはこうした番組が多いが、テレビ編成タイプの無料配信で、ビジネスモデルは大きく異なる。TBSは地上波テレビのような番組を定額課金で提供することで差別化する可能性が高そうだ。
株主に電通と博報堂DYの国内2大広告代理店が加わっているのも見逃せない。定額課金とするものの、ここからは番組になんらかの広告をつけて配信する可能性もみてとれる。
さらにオリジナルコンテツも投入するとしている。定額課金、テレビ放送、オリジナルコンテンツ…現在ある放送、配信の様々なビジネスモデルをハイブリットしたのがプレミアム・プラットフォーム・ジャパンと言えそうだ。
しかし、映像配信プラットフォームでは、映画会社や放送局が連合して、鳴物入りでスタートした「bonobo」がスタートからわずか1年半でサービス終了を発表したばかり。本格スタートが2018年春とするプレミアム・プラットフォーム・ジャパンがどの程度の存在感を発揮できるかは未知数だ。