日本のアニメ企業が連合を組み、2012年にスタートした海外向けアニメ配信の「DAISUKI.net」が大きな転機を迎えた。
「DAISUKI.net」を運営する株式会社アニメコンソーシアムジャパン(ACJ)の筆頭株主であるバンダイナムコホールディングス(バンダイナムコHD)は、自社以外14社の保有するアニメコンソーシアムジャパンの全株式を取得し、完全子会社化する方針を明らかにした。株式取得価額は約21億円、2017年3月31日付けでの実施を予定する。主な取得先は海外需要開拓支援機構(20.6%)、アサツー ディ・ケイ(19.4%)、アニプレックス(10.3%)。
バンダイナムコHDは完全子会社化について、事業環境の変化を理由に挙げている。近年、アニメ配信市場は成長を続けて、盛り上がりを見せている。しかし海外大手企業による配信事業への参入や展開強化で世界的に動画配信権の獲得競争が激化しているという。そこでより柔軟で迅速に対応するために事業再構築が必要であると判断したと説明する。
これまでアニメコンソーシアムジャパンは、日本のアニメ企業の力を結集した動画配信サービスの提供を目指してきた。今回の体制再編で、当初の目標からは大きな変更となる。有力企業の合議による経営ではなく、バンダイナムコグループの中でのスピード感のある経営を選択した。
「DAISUKI.net」は、もともとは2012年にアニプレックス、サンライズ、東映アニメーション、トムス・エンタテインメント、日本アドシステムズ、電通、アサツー ディ・ケイの7社の共同事業DAISUKI株式会社としてスタートした。
その後2014年に、クールジャパンの海外展開を掲げる国の方針とビジネス方向性が一致、官民出資ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」の出資を受けACJと事業統合した。さらに2015年にはKADOKAWA、講談社、集英社、小学館、グッドスマイルカンパニー、ブシロードの出資も加わり、日本企業連合の色合いをより濃くした。
一方で、バンダイナムコHDが筆頭株主となることで、同グループの事業主導色も強まった。出資企業の多くも独自の海外戦略も持ち、海外向けの番組配信でも、必ずしも「DAISUKI.net」に優先的に作品を提供する状況でもなかった。こうした対立するふたつの方向性が、今回の完全子会社化で解消される。
また事業連合の旗振りに役になったクールジャパン機構は、2月にやはりコンテンツ分野の出資企業 出版デジタル機構のメディアドゥへの売却方針を明らかにしたばかり。ファンドの出資案件のエグジッドの方針も影響した可能性もありそうだ。
より機動力のある経営体制を目指したACJだが、今後の事業は課題も多そうだ。当初目指した日本アニメの海外配信ポータルでは、先行企業である米国のクランチロールが好調で強大な壁として立ちはだかる。NetflixやAmazon といった企業も日本アニメに積極的だ。Amazonは今年1月に、米国で日本アニメ専門の定額課金の見放題サービスを開始している。
この結果、事業スタート当初から「DAISUKI.net」を悩ませてきた海外配信権獲得の価格高騰の問題は解決されていない。今回、発表されたACJの決算では2015年3月期は1億3100万円、16年3月期は11億1500万円の当期純損失を計上している。今後、どのような収益化構造を築くかが鍵になる。その際に今回株主を離れる企業に、引き続き協力を得られるかも重要になるだろう。