大人のためのアニメーションベスト10、米エンタメ2大誌がピックアップ

映画ビジネスのニュース

ライバル誌が偶然同じ特集を同時期に掲載することは日本でもしばしば起きる。8月第2週、米国ではエンタテイメント情報の2大メディアが、アニメーションのベスト10のピックアップで同じテーマを取り上げた。
ひとつは11日にヴァラエティに掲載された「10 Greatest Animated Films for Adults」、もうひとつは12日にハリウッドレポーターに掲載された「10 Best Animated Films for Adults」だ。いずれも大人のためのアニメーションを10本、ベスト10形式で選出している。
これは偶然ではあるけれど、理由はある。CGアニメーションでありながらR指定となってしまい、それでも全米3000館で上映する『ソーセージパーティー(Sausage Party)』が8月12日に公開となったからだ。しかも本作は大ヒットの様相をみせている。そうしたなか、ここであらためて大人が鑑賞するアニメーション映画って? というのが2つ記事の趣旨になっている。

 [ヴァラエティ Owen Gleiberman記者によるベスト10]
1位 『イエローサブマリン』 ジョージ・ダニング/ジャック・ストークス
2位 『ファンタスティック Mr.FOX』 ウェス・アンダーソン
3位 『ペルセポリス』 マルジャン・サトラピ
4位 『ヘヴィー・トラフィック』 ラルフ・バクシ
5位 『Anomalisa』 チャーリー・カウフマン
6位 『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』 ニック・パーク/S・ボックス
7位 『ウェイキング・ライフ』 リチャード・リンクレイター
8位 『チーム☆アメリカ/ワールドポリス』 トレイ・パーカー
9位 『火垂るの墓』 高畑勲
10位 『チコとリタ』 フェルナンド・トルエバ/ハビエル・マリスカル

 [ハリウッドレポーター John DeFore氏によるベスト10]
1位 『なんて素敵な日』 ドン・ハーツフェルト
2位 『ウェイキング・ライフ』 リチャード・リンクレイター
3位 『ベルヴィル・ランデブー』 シルヴァン・ショメ
4位 『AKIRA』 大友克洋
5位 『スキャナー・ダークリー』 リチャード・リンクレイター
6位 『Tower』 キース・マイトランド
7位 『火垂るの墓』 高畑勲
8位 『パプリカ』 今 敏
9位 『ペルセポリス』 マルジャン・サトラピ
10位 『ファンタスティック・プラネット』 ルネ・ラルー

米国の映画誌などのテーマを決めたベスト作品は、投票や編集部よりも、担当記者が一人で選出することが多い。それだけに選者の個性が強くでる。
今回もヴァラエティではコメディに、ハリウッドレポーターではSFによりシンパシーを持っているのが感じられる。1位もヴァラエティが1968年の『イエローサブマリン』、ハリウッドレポーターがドン・ハーツフェルト『なんて素敵な日』(2012年)を持ってくるなど対称的だ。
一方で両者が共通してピックアップした作品もある。『ペルセポリス』(マルジャン・サトラピ)、『ウェイキング・ライフ』(リチャード・リンクレイター)、そして日本の『火垂るの墓』(高畑勲)の3本である。共通認識として傑作とされたこれらはまさに偉大な作品と言っていいだろう。

日本からはこのほかハリウッドレポーターで、『AKIRA』(大友克洋)、『パプリカ』(今 敏)が挙がった。海外のアニメーションでベストにしばしば選出される宮崎駿の映画が含まれないのは、ファミリーキッズの作品との判断だろう。
一方で、国内では『となりのトトロ』と同時上映だった『火垂るの墓』が大人向けとされるのが興味深い。映画のターゲットの日米のずれを感じさせる。
日本以外の国ではアニメーションは子供向けと思われている、との意見は国内外でしばしば聞かれる。それゆえ大人も観られるアニメーションは日本の独壇場なのだと。しかし、こうして見れば、世界には大人向けの作品、それも傑作があまたあることが分かる。こうした作品を入り口に、大人もアニメーションを観る文化が広がることを期待したいところだ。

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