「ちいさこべえ」がシリーズ賞、上村一夫が遺産賞 仏・アングレームで日本2冠

アングレーム国際漫画フェスティバル

 世界のマンガが集まるフランスのアングレーム国際漫画フェスティバル(Festival international de la bande dessinée d’Angoulême)2017にて、日本のマンガが大きな賞に輝いた。
 実行委員会は2017年1月29日のフェスティバル最終日に、グランプリをはじめとする9つの賞を発表した。このうちシリーズ刊行が続く作品に与えられるシリーズ賞(PRIX DE LA SÉRIE)が、望月ミネタロウの『ちいさこべ』に与えられた。また長年の功績を讃え、歴史に残すべき作家と作品を選ぶ遺産賞には上村一夫とその作品『離婚クラブ』が選ばれた。日本マンガがふたつの賞を同時に受賞する明るいニュースだ。

 アングレームはフランスの地方都市を開催地に、フランスのマンガであるバンドデシネのイベントとして1974年にスタートした。フランスにおけるマンガの国際化もあり、現在はバンドデシネだけでなく、日本のマンガ、アメリカンコミックなども広く取り上げる。
 最終日に発表されるアワードは、フランスで出版された世界各国のマンガを対象としている。栄誉ある賞として、国際的にも関心が高い。フランスでの日本マンガ普及で、2000年以降は日本作品の受賞も増えている。フランスの批評家の評価が反映され、日本のマンガ賞とはまた異なったセレクトになるのも魅力だ。

 今回、シリーズ賞となった『ちいさこべ』もそんな作品のひとつだろう。『バタアシ金魚』、『ドラゴンヘッド』で知られる望月ミネタロウが、大工の棟梁を主人公とする山本周五郎の小説を題材に、舞台を現代に置き換えてマンガ化した。
 シリーズ賞は最優秀作品賞や新人賞と並ぶ主要な賞のひとつで、日本作品の受賞は2004年『20世紀少年』(浦沢直樹)以来12年ぶりの快挙となる。今後、日本での本作に対する関心がさらに広がりそうだ。

 一方、遺産賞も、歴代の巨匠が候補に挙がる中で、一人だけが選ばれる大きな賞である。日本からはこれまで2009年に水木しげるが『総員玉砕せよ!』で受賞したのみである。
 今回上村一夫は、日本のエロスを漂わせた劇画の第一人者、開拓者としてピックアップされた。フェスティバル開催中は、その業績を回顧する展覧会も開かれている。

 このほか42作品からなる公式セレクションには『いぬやしき』(奥浩哉)、『弟の夫』(田亀源五郎)、『Sunny』(松本大洋)が、子ども向け作品のユースセレクションには『はずんで! パパモッコ』(山本ルンルン)、『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平)が候補作となっていた。しかし、残念ながら賞には届かなった。

アングレーム国際漫画フェスティバル2017
http://www.bdangouleme.com/

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