「Kubo」はWノミネート 長編アニメーションからVFX 米国アカデミー賞候補作

米国アカデミー賞長編アニメーション部門

■ 勢いを増すディズニー・アニメーション

 2017年1月24日に、米国の映画芸術科学アカデミーは第89回アカデミー賞の各部門のノミネート作品を発表した。日本から期待されていた『君の名は。』は惜しくもの選考から漏れたが、スタジオジブリ製作の『レッドタートル ある島の物語』がノミネート入りした。他の4作品は『Kubo and the Two Strings』、『モアナと伝説の海』、『My Life as a Zucchini』、『ズートピア』である。
 映画芸術科学アカデミーはノミネート発表の際に、作品と監督だけでなく、プロデューサーの名前も明記する。『レッドタートル』ではマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督と鈴木敏夫プロデューサーが並べられており、製作出資も含めて日本からのノミネートと言っていいだろう。

 今回、目立ったのはディズニー・アニメーション・スタジオの活躍だろう。2016年はとりわけハリウッドのメジャースタジオの大作CGの公開が多かったが、ノミネートに残ったのは、『ズートピア』と『モアナと伝説の海』だけである。いずれもディズニー・スタジオだ。
 一方、同じウォルト・ディズニーで過去15回のうち半分以上、8回の最優秀賞に輝いたピクサー・アニメーション・スタジオの『ファインディング・ドリー』は、ここに残ることが出来なかった。ディズニー・スタジオは、2013年の『アナと雪の女王』、14年の『ベイマックス』に続く、3度目の最優秀賞を狙う。
 スタジオジブリ作品は、これまでウォルト・ディズニーグループのブエナビスタ配給が多かった。しかし、『レッドタートル』はアート色が強いこともあり、良質な傑作を得意とするソニークラシックスが配給している。

■ 長編ドキュメンタリー部門の『ぼくと魔法の言葉たち』も注目

 やはり近年の好調さを感じさせるのは、『Kubo and the Two Strings』のライカだろう。ストップモーションで名を馳せるライカは2009年『コララインとボタンの魔女』、12年『パラノーマン ブライス・ホローの謎』、14年『The Boxtrolls』に続く、4作品連続のノミネート入りとなった。
 さらに今回は、VFX部門(視覚効果賞)でもノミネート5本に挙げられた。ストップモーションのアニメーションとVFXの融合にスポットライトが当たった。

 アニメーション関連は、このほかに主題歌賞でも『モアナと伝説の海』の「How Far I’ll Go」Moana、『Trolls』から「Can’t Stop The Feeling」が選ばれている。『Trolls』はドリームワークス・アニメーションのファミリー作品。ドリームワークスは、2016年の『Trolls』、『カンフー・パンダ3』とも多くの賞レースで言及されることがなく、ここで一矢報いたかたちだ。
 さらに長編ドキュメンタリー部門でも、アニメーションに関連した作品が目を惹く。『ぼくと魔法の言葉たち』(『Life, Animated』)は、自閉症の少年がディズニー・アニメーションを通じて言葉を取り戻していくとストーリー。日本でも今年4月に公開予定だ。

■ 『ドクター・ストレンジ』に『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』も:VFX部門

 一方、VFX部門の候補は『ディープウォーター・ホライズン』、『ドクター・ストレンジ』、『ジャングル・ブック』、『Kubo and the Two Strings』、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の5作品である。2016年12月16日までにすでにショートリスト10本に絞りこまれていたから、ノミネート入りは1/2と可能性は高かった。
 逆にノミネートに届かなかったのは、『メッセージ』、『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』、『パッセンジャー』。落とすには惜しい傑作が並ぶ。
 しかしSF、ファンタジーが多くを占めるこの部門で、『ディープウォーター・ホライズン』が残ったのはうれしいニュースだ。2010年にメキシコ湾岸で起きた大規模な原油流出事件を題材にした映画で、社会的な事件の様子がVFXの技術で実現した。
 いずれの最優秀賞も3月21日にハリウッドのドルビーシアターで開催される授賞式にて、発表される予定だ。 

[第89回 米国アカデミー賞 長編アニメーション賞ノミネート]
■ 『Kubo and the Two Strings』
■ 『モアナと伝説の海』
■ 『My Life as a Zucchini』
■ 『レッドタートル ある島の物語』
■ 『ズートピア』

[第89回 米国アカデミー賞 視覚効果(VFX)賞ノミネート]
■ 『ディープウォーター・ホライズン』
■ 『ドクター・ストレンジ』
■ 『ジャングル・ブック』
■ 『Kubo and the Two Strings』
■ 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

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