大手放送局と映画会社がアニメ事業での協業を目指して、資本業務提携を結ぶ。2024年1月25日、TBSホールディングス(TBSHD)と松竹が、資本業務提携で合意したことを明らかにした。
両社はアニメーション関連事業での業務提携を前提に、互いに30億円を投じて相手側の株式を取得する。2023年12月29日の株価を基準にすると、TBSHDの松竹株式持分は発行済株式の2.26%、松竹のTBSに対する持分は0.59%となる。2024年6月30日までに取得を完了する予定だ。
アニメーション事業での協業を目的にした株式持ち合いは大手メディア・エンタテイメント企業では珍しいが、その提携範囲は幅広い。具体的には4分野が挙げられている。
ひとつはテレビアニメ、アニメ映画、実写映画の共同開発。さらにオリジナルのIPとキャラクターの共同開発と展開も掲げる。新しい作品やキャラクターを生み出すことが目指されている。
さらに3つめとしてアニメシアターと専用イベントホール事業の共同設立と運営の検討、4つめはより具体的に「赤坂エンタテインメント・シティ」と東銀座再開発の提携と新規協業の検討としている。アニメを通じた舞台や劇場関連での協業も大きな軸とみてよさそうだ。
近年の国内外のアニメ産業の拡大で、アニメ事業の積極展開を掲げるメディア・エンタメ企業が増えている。TBSHDもアニメーション制作会社Seven Arcsを子会社化し、アニメ枠拡大などアニメビジネスの拡大を目指している。松竹もアニメ製作や劇場配給に積極的だ。
一方でアニメ企画・製作はパワーゲームの様相を呈しており、より総合力のある企業が優位になりつつある。TBSと松竹という大型協業は、それに勝ち抜く戦略として有効だ。アニメ作品の流通の要となる「放送」と「劇場興行」という補完関係が成立するからだ。
また注目すべき点は、「アニメシアターと専用イベントホール事業の共同設立と運営」「赤坂エンタテインメント・シティと東銀座再開発の提携と新規協業」が挙げられた点だ。
アニメビジネスでは現在、ライブ関連などの体験型消費が拡大しており、大きな収益源になっている。アニメシアターと専用イベントホールは、こうした分野でも積極的に対応していくものとなる。TBSは赤坂の本社周辺で再開発中の「赤坂エンタテインメント・シティ」で劇場・ホール・シアターを開発中、松竹は現本社のある松竹東劇ビルの再開発が控えている。さらに全国各地で映画館を中心とした不動産を持つ。アニメを軸にこれらを積極的に活用していこうとの考えもありそうだ。