2017年1月26日から29日までの4日間、フランスでアングレーム国際漫画フェスティバル(Festival International de la Bande Dessinee)が開催される。フランスの田舎町に、期間中、2万人以上の参加者、7000人以上のマンガ関係のプロフェッショナルが集まるイベントだ。
そのフェスティバルから公式セレクション(Selection Officielle)42作品が発表された。公式セレクションはイベントの目玉になるもので、期間中この中から最優秀作品賞、審査員賞、シリーズ賞、新人賞などが選ばれる。
フランスで出版された作品を対象として、バンドデシネの他、日本のマンガやアメリカンコミックスも含まれる。世界のマンガ界を代表する作品が受賞することから、大きな関心を浴びるアワードだ。
公式セレクションには毎年、日本作品も選ばれているが、2017年は4作品が挙がった。望月ミネタロウの『ちいさこべえ』、奥浩哉の『いぬやしき』、田亀源五郎の『弟の夫』、松本大洋の『Sunny』だ。アングレームは、例年、作家性、文芸色の強い作品を選ぶ傾向が強いが今回も日本からは個性派の作品が並んだ。
アングレームではこれまで、水木しげるの最優秀作品賞をはじめ浦沢直樹、谷口ジローなど、日本からも数多くの受賞もある。2017年も期待がかかる。
『ちいさこべえ』は、山本周五郎の小説を望月ミネタロウ現代に置き換えてマンガ化した。火事で全てを失った大工の棟梁を主人公に描く。望月ミネタロウは望月峯太郎の名義で描いた『バタアシ金魚』、『ドラゴンヘッド』、『鮫肌男と桃尻女』でもよく知られている。
奥浩哉は『GANTZ』、『変』などのヒット作がある。今回は最新作の『いぬやしき』の名前が挙がった。『弟の夫』は、ゲイ向けのマンガで知られる田亀源五郎が初めて一般誌に同性愛をテーマに連載したことで話題を呼んだ。
松本大洋は『鉄コン筋クリート』や『ピンポン』で、海外で人気の高い作家。今回候補になった『Sunny』では、児童養護施設で生活する子どもたちをテーマにしている。
8歳から12歳の子どもに向けたユースセレクション(Selection Jenesse)、そして歴史の残すべき名作を選ぶ遺産賞(Selection Patrimoine)の候補にも日本の作品がある。
ユースセレクションは、山本ルンルンの『はずんで! パパモッコ』と堀越耕平の『僕のヒーローアカデミア』。こちらも全12作品でグランプリを競う。
遺産賞は上村一夫の『離婚倶楽部』である。アングレームは日本の実力派を思わぬかたちでピックアップすることが多いが、2017年の上村一夫はそうした作家だ。1960年代以降、エロティシズムを漂わせる劇画で人気を博した。アングレームでは上村一夫の作品を振り返る展覧会も開催される。
アングレーム国際漫画フェスティバル2017 http://www.bdangouleme.com/
[日本からの候補作品]
■ 公式セレクション(Selection Officielle)
『ちいさこべえ』 望月ミネタロウ
『いぬやしき』 奥浩哉
『弟の夫』 田亀源五郎
『Sunny』 松本大洋
■ ユースセレクション(Selection Jenesse)
『はずんで! パパモッコ』 山本ルンルン
『僕のヒーローアカデミア』 堀越耕平
■ 遺産賞(Selection Patrimoine)
『離婚倶楽部』 上村一夫