米国アカデミー賞 長編アニメーション賞ノミネート5作品を予想!

米国アカデミー賞長編アニメーション部門

 2017年1月24日夜22時(日本時間)から、いよいよ米国アカデミー賞のノミネートが発表される。授賞式、そして受賞者発表は2月27日午前中だが、近年はその競争の激しさからノミネートに挙がるかどうかも大きな関心を呼んでいる。
 2017年になかでも激烈さを極めているのが、長編アニメーション部門である。ノミネート対象が史上最高の27作品にもなる。しかも、例年であれば余裕でノミネートすると見られる傑作が多数並ぶから、受賞は無論だがノミネートされるのさえなかなか大変な状態だ。

 そんななかで一足早く、ノミネートの行方を占ってみた。予想というのは常に外れるもの。後から、笑われる可能性も大きいが、夜に発表される結果を待つ間の楽しみにしていただけるとありがたい。

 まず下記の表は、今回、ノミネート対象になっている全27作品を一覧にしたものである。ノミネートの可能性が高いものから◎、○、△、▲、×としている。

[第89回 米国アカデミー賞 長編アニメーション賞ノミネート予想]

◎『ズートピア』
◎『Kubo and the Two Strings』

○『君の名は。』
○『My Life as a Zucchini』
○『モアナと伝説の海』
○『レッドタートル ある島の物語』

△『ファインディング・ドリー』
△『SING/シング』
△『百日紅~Miss HOKUSAI~』

▲『リトル・プリンス 星の王子様と私』
▲『Long Way North』
▲『ペット』

× 『アングリーバード』/× 『April and the Extraordinary World』/× 『Bilal』
× 『アイス・エイジ5』/× 『Kingsglaive Final Fantasy XV』/× 『カンフー・パンダ3』
× 『西遊記之大聖帰来』/× 『Mune』/× 『Mustafa & the Magician』
× 『Phantom Boy』/× 『ソーセージ・パーティー』/× 『Snowtime!』
× 『コウノトリ大作戦!』/× 『Trolls』/× 『25 April』

 ◎としたのは、『ズートピア』と『Kubo and the Two Strings』の2作品のみである。ディズニー映画の『ズートピア』は、動物たちをキャラクターにして誰でも心の中に持つ偏見や差別についてテーマとしている。エンタテイメントでありつつメッセージを送り出す傑作だ。トランプ大統領の登場に反対する米国の映画人の多くの心を捉えていることも有利だ。今回の受賞の最有力候補でもある。
 『Kubo and the Two Strings』は中世の日本をテーマにしたファンタジックなストップモーションアニメーション。これまでにも傑作を多く生み出したライカの最新作だが、アカデミー賞に先立つ各賞では『ズートピア』を上回る受賞をしている。『ズートピア』と『Kubo and the Two Strings』のノミネートは確実、むしろ逃すほうが事件だろう。

 ○はノミネートの可能性が極めて高いが、△も含めて激しく競り合っている作品だ。この中からどの名前が挙がってもおかしくないが、逆に残り3作品はこの7作品のいずれかと見ていい。
 米国アカデミー賞は、ディズニー、ピクサー、ドリームワークス・アニメーション、ブルースカイスタジオといったハリウッドの大作CGが優位と見られがちだ。しかし、それはもうひとつの大きな賞であるゴルーデングローブ賞には言えるが、アカデミーについては必ずしも当てはまらない。前回、第88回はそうしたハリウッドのCG映画のノミネートは受賞作となった『インサイド・ヘッド』のみである。残りは『アノマリサ』、『父を探して』、『映画 ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』、『思い出のマーニー』。3本が外国作品で、中小規模の公開もまた3作品。特に今回からアニメーション部門は海外からの投票者を増やしており、作品の多様性が広がる可能性もある。『ズートピア』以外のCGアニメの大作が全てノミネートから消える可能性も十分ある。

 大作でない傑作が浮上するとすれば、『My Life as a Zucchini』、『君の名は。』、『レッドタートル ある島の物語』の3作品だろう。『My Life as a Zucchini』はアヌシー国際アニメーション映画祭でもグランプリに輝いた。知名度、評価も抜群だ。しかし、今回は外国語映画賞の対象9作品にも残っており、その影響が読み切れない。
 日本からの作品は当初は『百日紅~Miss HOKUSAI~』のほうが知られており、十分な公開をしていない『君の名は。』が不利と見られていた。しかし、日本を含むアジアでの大ヒットもあり、メディアの露出が増えて、評判も高い。それがロサンゼルス映画批評家協会での長編アニメーション賞受賞につながった。ノミネートの有力作品のひとつだ。『レッドタートル ある島の物語』も含めて、この3作品の中から最低でも1作品、あるいは全部がノミネートに残ると考える。
 逆にCG大作で残るとすれば、『モアナと伝説の海』、『ファインディング・ドリー』、『SING/シング』だが、いずれもこれといった決め手に欠けて、それだけ印象も薄いと言える。

 このほか注目されるのが、『リトル・プリンス 星の王子様と私』である。日本ではワーナー ブラザースの配給であったが、紆余曲折を経て、米国では映像配信プラットフォームのNetflixが配給をした。CGとストップモーションを組み合わせた映像は素晴らしく、Netflixの強力な宣伝もあり思わぬ伏兵になるかもしれない。配信企業の動向も合せて注目である

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