「セーラームーン」に「攻殻機動隊」、ジブリ映画も 米国で相次ぐアニメの旧作公開

美少女戦士セーラームーン

 2017年1月29日、北米で『美少女戦士セーラームーン』の劇場映画が公開される。セーラームーンのファンであれば、最近劇場映画の新作なんてあったかな? と思うかもしれない。それもそのはずで上映されるのは、日本では1993年に東映系で全国公開された『美少女戦士セーラームーンR』である。米国ではこれまで劇場公開がなかったが、今回はイベント上映でリバイバルさせる。
 上映は一日だけの限定であるが1月20日までに上映を決定した劇場は北米合計で240館にも及ぶ。現地の企業VIZ Mediaと映画配給会社ELEVEN ARTSの協力により実現したが、20年以上前の作品とは思えない規模だ。

 こうした試みは『セーラームーン』だけでない。日本アニメの旧作を劇場復活させる試みが、いま米国で増えている。2月7日、8日には、傑作として知られるSFアニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が現地のアニメ企業ファニメーションによりリバイバル上映される。
 1995年に押井守監督のもと制作された本作は、海外の映画関係者に大きな影響を与えたことで知られるが、96年の米国公開は単館上映とささやかなものだった。それを再び劇場に復活させる。
 さらにスタジオジブリの作品も相次ぐ。2016年12月4日、5日に公開15周年記念として『千と千尋の神隠し』を400スクリーンで公開した。同じ12月には『海がきこえる』、17年1月1日には『On Your Mark』、1月5日、9日には『もののけ姫』が上映されている。こちらは良質のアニメーション映画で定評のあるGKIDSによる配給だ。

 『美少女戦士セーラームーン』は2011年に始まる米国でのリバイバルブーム、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は同じ士郎正宗のマンガを原作にした実写映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』が3月31日に全米公開されるのに合わせたタイミングとなる。スタジオジブリはGKIDSによる映像ソフト発売。それぞれに理由はある。

 しかし、こうしたリバイバルが相次ぐのは偶然ではない。ひとつはデジタルシネマによる短期間で多くのスクリーンで上映するイベント型の映画興行が、北米の日本映画の分野でいよいよ定着してきたことである。フィルム上映であれば上映館ごとに現像のコストが必要だが、フィルムのないデジタルシネマでは、全国に散らばるファンに同時に作品を届けることが出来る。これはニッチなファンを持つ日本のアニメや映画にぴったりだ。
 短期間での一斉上映はアニメだけでなく、邦画でも行われている。いまではかなりの作品がこうしたかたちで米国のファンに紹介されている。映画文化の多様化にも貢献する。

 一方で、こうした試みはすでに2007年頃から実施されていた。しかし、当初は話題作にも関わらず、動員に結びつかないビジネス的な失敗も少なくなかった。
 このなかでイベント型の公開は、もともとブランド力の強い作品が成功する傾向が明らかになってきている。多くの映画を配給するファニメーションだが、最大のヒットは2015年の『ドラゴンボールZ 復活の「F」』の800万ドル超。長年、米国で人気の作品だ。
 やはり配給作品の多いELEVEN ARTSでは、『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』、『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』がヒット作だ。ナルトシリーズの長年の人気に支えられている。GKIDSの配給でも、他の作品に比べてスタジオジブリ作品のほうがより多くの観客を集めている。
 短期間の上映のために宣伝に投入できる力は限られており、日本での話題作であっても認知度の拡大は容易ではない。結局、昔からよく知られている作品により多くのファンが集まる仕組みになる。
 逆に言えば、すでに知名度があれば、DVDやBlu‐ray向けのプロモーションだけでなく、興行自体でも利益をだすことが可能になる。そこで往年の傑作がイベント上映で復活する。
 米国で映像ソフトが昔ほど売れなくなっている今、こうした劇場ビジネスがますます重要になるかもしれない。今後も思わぬ作品が、さらに劇場上映されることもありそうだ。

[2010年以降の北米の主な小規模公開の日本アニメ作品]

『ドラゴンボールZ 復活の「F」』 800万ドル 2015年 (ファニメーション)
『ドラゴンボールZ 神と神』 255万ドル 2014年 (ファニメーション)
『コクリコ坂から』 100万ドル 2013年 (GKIDS)
『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』 92万ドル 2015年 (ELEVEN ARTS)
『かぐや姫の物語』 70万ドル 2014年 (GKIDS)
『思い出のマーニー』 56万ドル 2015年 (GKIDS)
『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』 52万ドル 2015年 (ELEVEN ARTS)
『バケモノの子』 49万ドル 2016年 (ファニメーション) 
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』 38万ドル 2013年 (ELEVEN ARTS)
『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』 26万ドル 2016年 (ELEVEN ARTS)

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. アヌシー東京ブース
     東京都に拠点を持つ中小アニメ制作社の海外進出をサポートする「アニメーション海外進出ステップアッププ…
  2. 浄園祐プロデューサー
     2019年5月31日より、『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』の劇場上映がスタートする。ハ…
  3. 「NEW MOTIONーthe Next of Japanese Animationー」
     世界最大規模の国際アニメーション映画祭であるフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で、今年大規…
ページ上部へ戻る