米国Amazonが日本アニメ専門の定額見放題サービス「Anime Strike」開始

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 米国のIT企業の巨人が、日本のアニメにこれまで以上に積極的に取り組むこととなった。米国のAmazon.comは、日本アニメを専門にする新たな映像配信サービス「Anime Strike」を2017年1月12日(現地時間)にスタートした。
 Amazon.comは、これまでにも日本アニメのBlu-ray、DVDなどの映像ソフト販売、動画配信を行ってきた。しかし、アニメに限定したチャンネル形式の映像配信サービスは「Anime Strike」が初となる。また放送会社などメディアごとの独自チャネルはこれまでにもあったが、ジャンルに特化した個別のチャンネルも初だ。映像配信サービスの中で需要の高い日本アニメに限定することで、売上の積み上げと、ファンの囲い込みを目指す。

 「Anime Strike」の視聴は、サービスで先行するAmazon プライム ビデオと同様、定額見放題を導入している。1ヵ月ごとの課金で月4.99ドル、さらにAmazon プライムのサービスに合わせて加入することが可能になる。視聴デバイスも、PC、スマホ、タブレットと用途に合わせて利用が可能だ。
 配信作品には、1月からスタートした『クズの本懐』『鬼平』などを初め、人気の最新作が含まれている。最新作は日本での放送に合わせて毎週新作エピソードが追加される。日本とほぼ同時の視聴を可能にする。また『進撃の巨人』『ガールズ&パンツァー』『魔法少女まどか☆マギカ』などの人気タイトルが並ぶ。

 日本アニメは、現在、米国、中国をはじめ世界的に人気の高い番組コンテンツとなっている。各国のアニメ専門の映像配信サービスに加えて、NetflixやHuluといった幅広い番組を用意する総合サービスでも積極的に導入されている。これが日本のアニメ作品の海外番組販売価格にも影響し、2014年以降に急激に高騰し、アニメ関連企業に利益をもたらしている。
 こうしたなかで、今回Amazon.comがサービスを開始した米国では、2016年に日本アニメの2大企業であるクランチロールとファニメーションが業務提携を発表した。大手企業が協力することで、高騰する配信権に対抗する狙いもあったとみられる。実際にこれにより番組販売価格は落ち着きを見せたとされている。しかし、今回圧倒的な資本力を持つAmazon.comの日本アニメ配信事業への本格参戦で、業界の状況は新たな様相を見せそうだ。

 海外での日本アニメ専門映像配信サービスは、米国・サンフランシスコに本社を持つクランチロールが最大手。月額有料会員だけでも約90万人と見られる。定額課金サービス全体でも大きな存在だ。
 Amazon.comが、こうしたニッチで大きな市場に目をつけたかたちである。さらにアニメファンは番組視聴だけでなく、映像ソフトやマンガ、キャラクターグッズの購入にも積極的だ。Amazon.comにとっては、こうしたアクティブなファンの囲い込みにもつながる。
 今後は、先行するクランチロールに対して、どうサービスを差別化するかが鍵になる。豊富なタイトル数に加えて、独占作品確保も課題になってきそうだ。Amazon.comは2016年に、すでにフジテレビの人気アニメブランド「ノイタミナ」の世界独占配信権を獲得し、その布石を打ち始めた。

 日本アニメは2010年代に入り、世界での人気が再び高まっていると指摘される。その原動力となっているのが、インターネットの映像配信サービスの急激な普及である。
 近年は海外のファンは、これらを通じて「安く」、「早く」、「簡単」に日本アニメの最新作に触れることが可能になった。加えて、日本の権利者から配信権を獲得した正規のサービスが視聴ユーザーに安心を与えている。Amazon.comのアニメ重視は、こうしたトレンドをさらに活気づかせることになりそうだ。

「Anime Strike」 https://goo.gl/AFXR5E

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