「白組読本」から見えてくる 個性あつまる映像スタジオの姿

白組読本

 映像制作の白組は不思議な会社だ。映像表現の方法があまりにも多様で、どう分類していいか時々分からなくなる。それは混乱というよりも、むしろ表現の可能性という点で、他社とは異なる圧倒的な強みになっている。
 CG・VFXのスタジオは、もともと実写映画からアニメ、ゲーム、CM、遊技機まで幅広い映像を手がけることが多い。それにしても白組の振れ幅は特別だ。
 実写映画『ALWAYS三丁目の夕日』で昭和の東京を再現したかと思えば、『寄生獣』、『シン・ゴジラ』では未知の生物を描き、もう片方では『STAND BY ME ドラえもん』や『GAMBA ガンバと仲間たち』でとびっきりのCGアニメを作りだす。テレビアニメ『もやしもん』では元請制作を担当、『魔弾戦記リュウケンドー』では特撮番組、ストップモーション・アニメーションも……と調べるとキリがない。

 なぜこんなにも様々な映像が生まれるのか?その答えは、2016年11月に刊行された『白組読本』を読むと納得がいく。本書では白組のスタッフや共に仕事をしてきたプロデューサーのインタビューを通じて、同社の映像づくりの考え方や歴史を紐解いた。
 多様な映像の答えは、まず島村達雄社長、小川洋一副社長の言葉の中に見つかる。白組は1974年に設立と40年以上の歴史を持つが、その始まりではCMを多く制作していた。一方で東映動画(現東映アニメーション)一期生という島村のキャリアから、アニメーションを多く用いた。また小川も広告映像がキャリアのスタートになる。それが映像づくりの可能性を追求していくなかで、CG・VFXに行き着く。
 CG・VFXを得意とするスタジオの多くは、当初からCGを起点にすることが多い。しかし、白組は映像表現の最適な方法、様々な可能性の中からそれを選び取った感じだ。だからこそ映像表現のやり方に偏見がなく、様々な作品が生まれると思えてくる。

 インタビューでは、山崎貴、渋谷紀世子、八木竜一、花房真という白組を代表するスタッフが語るのも読みごたえたっぷりだ。それぞれが個性豊かで、会社の多様性は作り手の多様性ともつながっている。
 さらに阿部秀司(前ROBOT代表取締役)、沢辺伸政(小学館)、川村元気(東宝)と仕事でパートナーを組むプロデューサーに話を聞く。作品誕生のエピソードも交えながら、外部からみた視点となる。
 さらに白組の手がけたこれまでの作品のリストや会社の歴史年表、スタジオの拡大の変遷と資料価値も高い。そして資料と併せてインタビューパートを読むことで、歴史の重みも伝わってくる。

『白組読本』
発売日:  2016年11月11日
価格: 2700円(税込)

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