2017年 劇場上映アニメさらに増加 中小規模のシリーズ作品が活発

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[国内劇場アニメ、さらに増加へ]
 2016年の国内映画興行は、売上げが2300億円前後の過去最高に達する見込みと絶好調だ。市場を牽引するのは、興行収入210億円を突破する『君の名は。』、61億円を突破する『劇場版 名探偵コナン 純黒の悪夢』などの邦画アニメである。定番シリーズの好調に加えて、『この世界の片隅に』、『聲の形』など、劇場に向けたオリジナル企画作品もヒット作が相次ぎ、アニメ映画の活躍が目立つ一年であった。
 こうしたアニメの勢いは2017年にも続くのだろうか?少なくとも上映作品本数のうえでは、2017年は引き続き映画館を席巻しそうだ。2016年12月31日の段階で発表されている邦画アニメの公開・上映本数を調べたところ、前年2015年12月31日を上回っていることが分かった。近年、劇場公開とODS興行の区別が難しくなっていることから、数字には両方のかたちでの公開・上映を含んでのものである。

 筆者が確認出来た作品は53本、この中には『ルパン三世 カリオストロの城 MX4D』と『劇場版カードキャプターさくら』のリバイバル上映、『映画かみさまみならい ヒミツのここたま』と同時上映の『映画たまごっち ヒミツのおとどけ大作戦!』も含まれるが、この3作品を除外しても前年を上回る。
 引き続きコアターゲットを狙った小中規模の公開が活発であること、それらの作品が2部構成、3部構成、6部構成などシリーズ化しているのも、増加の理由である。例年、12月末の段階で上映が発表されている映画は上映が8月末までのものがほとんどになっている。今後秋以降の作品が発表されればその数はさらに増える。とりわけODS興行の作品は、大作映画に比べて発表が公開直前になるケースが多い。未発表だが、そうしたシリーズの『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第二章』、『デジモンアドベンチャー tri. 第5章』、『魔法使いの嫁 星待つひと:後篇』は2017年中の公開が高いと見ていいだろう。
 また毎年秋の「プリキュア」シリーズ新作、夏の「アンパンマン」シリーズ新作も、2017年にも公開される可能性が高い。さらに劇場映画化のみが発表されている公開時期未公表の作品からも2017年に登場する可能性もある。

[オリジナル企画では米林宏昌、神山健治、湯浅政明、実力派監督が並ぶ]
 テレビシリーズ発のシリーズが多い中で、劇場オリジナル企画で注目されるのは、夏に東宝配給で公開される『メアリと魔女の花』。スタジオジブリ出身の米林宏昌が監督する。同じ東宝配給では、岩井俊二監督のテレビドラマを人気のアニメスタジオのシャフトが映像化する『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が挑戦的な作品だ。
 2月には神山健治監督の『ひるね姫 知らないワタシの物語』、4月には湯浅政明監督の『夜は短し歩けよ乙女』と実力派監督作品が相次ぐ。『夜は短し歩けよ乙女』を送り出すフジテレビ「ノイタミナ」は、タイトルを明かさないオリジナル劇場作品をもう1本、春に公開することを予告している。

 2016年は、『ズートピア』、『ファィディング・ドリー』、『ペット』がいずれも大ヒットして、洋画アニメーションも好調だった。しかし、2017年は現時点で前年より少ない7本のみの発表である。
 うち4作品はヒットメーカーのディズニー、ピクサー、イルミネーションが製作したものだ。しかし、すでに米国公開されている『モアナと伝説の海』は、近年のディズニーの作品では興行がやや弱い。またピクサーの『カーズ3』(仮)も同じピクサーの『ファィンディング・ニモ』シリーズ、『トイ・ストーリー』シリーズの人気に及ばない。これを覆すかが注目点になる。
 一方でイルミネーションは、人気の『怪盗グルー』シリーズの最新作、それに新IPの『SING シング』となる。2016年の『ペット』に続く波に乗れるかが鍵だ。
 面白いところでは、中国アニメーションとしては中国国内で最大のヒットとなった『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』だろう。公開規模は大きくないと見られるが、評価の高い話題作である。 

[アニプレックスの飛躍になるか?『劇場版 ソードアート・オンライン』]
 2017年は、引き続き映像メーカーが自ら配給する作品が目立つ。アニプレックスは2016年に『同級生』、『告白実行委員会』シリーズ、『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』を配給し、存在感を発揮した。2017年も『黒執事 Book of the Atlantic』や『劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』といった人気作の配給を予定している。とりわけ『劇場版 ソードアート・オンライン』は、すでに全国約150館で前売り券が発売されており、これまで以上に大きな興行が予想される。アニプレックスの配給事業の試金石になる。
 『KING OF PRISM』がスマッシュヒットになったエイベックス・ピクチュアーズも、再び『KING OF PRISM PRIDE the HERO』で勝負を掛ける。ポニーキャニオンは、『結城友奈は勇者である 鷲尾須美の章』のシリーズ上映を開始する。

 アニメ映画が増加する中で、独自の方向性を探るのがワーナー ブラザースである。2017年は現在発表するアニメ映画は『ひるね姫』だけだが、実写映画でもアニメファンをかなり意識している。2017年は『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』、『銀魂』、『鋼の錬金術師』、2018年には『BLEACH』とアニメファンにお馴染みの作品を次々に実写化する。ワーナーはこれまでに『るろうに剣心』や『DEATH NOTE』でそうした作品を一般層に広げることに成功しており、これをさらに推し進める。
 他社でも『咲-saki-』、『一週間フレンズ。』、『東京喰種 トーキョーグール』、『斉木楠雄のѰ難』、『曇天に笑う』など、アニメ化で火がついた作品が目白押しだ。さらに2017年5月には、往年の人気アニメ『破裏拳ポリマー』が実写映画化、公開される。

2017年 公開・上映予定の劇場アニメ
(2016年12月31日時点)

[邦画]

■ 1月6日
『傷物語III 冷血篇』(東宝映像事業部)  
■ 1月7日
『甲鉄城のカバネリ 総集編 後編 燃える命』(松竹) 
■ 1月14日
『チェインクロニクル ヘクセイタスの閃(ひかり) 第2章』(ショウゲート)
■ 1月20日
『ルパン三世 カリオストロの城 MX4D』
■ 1月21日
『黒執事 Book of the Atlantic』(アニプレックス)
『劇場版カードキャプターさくら』
■ 2月3日
『虐殺器官』(東宝映像事業部)
■ 2月4日
『こんぷれっくす×コンプレックス』(ガチンコ・フィルム)
『魔法使いの嫁 星待つひと 中篇』(松竹メディア事業部)
『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』(ショウゲート)
■ 2月11日
『青鬼 THE ANIMATION』
『チェインクロニクル ヘクセイタスの閃(ひかり) 第3章』(ショウゲート)
■ 2月18日
『劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』(アニプレックス)
■ 2月25日
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章』(松竹メディア事業部)
『劇場版トリニティセブン  悠久図書館と錬金術少女』(エイベックス・ピクチャーズ)
『劇場版総集編 オーバーロード 不死者の王』(KADOKAWA)
『デジモンアドベンチャー tri. 第4章「喪失」』(東映アニメーション/東映)
■ 3月4日
『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(東宝)
『劇場版プリパラ み~んなでかがやけ!キラリン☆スターライブ』(エイベックス・ピクチャーズ)
■ 3月10日
『しまじろうと にじのオアシス』(東宝映像事業部)
■ 3月11日
『劇場版総集編 オーバーロード 漆黒の英雄』(KADOKAWA)
■ 3月18日
映画『プリキュアドリームスターズ!』(東映)
『劇場版 黒子のバスケ LAST GAME』(松竹)
『ひるね姫 知らないワタシの物語』(ワーナーブラザース映画)
『結城友奈は勇者である 鷲尾須美の章 第1章』(ポニーキャニオン)
■ 4月7日
『夜は短し歩けよ乙女』(東宝映像事業部)
■ 4月18日
『映画クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』(東宝)
『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』(東宝)
■ 4月28日
『映画かみさまみならい ヒミツのここたま 奇跡をおこせ♪テップルとドキドキここたま界』
/『映画たまごっち ヒミツのおとどけ大作戦!』(東宝映像事業部)
■ 春
劇場版『FAIRY TAIL -DRAGON CRY-』
「ノイタミナ」オリジナル劇場作品
『ご注文はうさぎですか??』新作アニメスペシャルエピソード
■ 5月27日
『バイオハザード ヴェンデッタ』(KADOKAWA)
■ 初夏
『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』(アニプレックス?)
■ 6月
『KING OF PRISM PRIDE the HERO』(エイベックス・ピクチャーズ)
■ 7月15日
『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』(東宝)
■ 7月21日
『劇場版 生徒会役員共』(クロックワークス)
■ 7月22日
『魔法少女リリカルなのは Reflection』(松竹)
■ 8月18日
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(東宝)
■ 夏
『メアリと魔女の花』(東宝)
『きみの声をとどけたい』(東北新社)
■ 秋
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 第5話激突 ルウム会戦』(松竹)
■ 12月
『映画 妖怪ウォッチ 第4弾』(東宝)
『ガールズ&パンツァー 最終章 第1章』(ショウゲート?)

■ 2017年
『劇場版 はいからさんが通る 前編  紅緒、花の17歳』
『はいからさんが通る』(後編)
『劇場総集編 コードギアス 反逆のルルーシュ 第1章』(ショウゲート?)
劇場版『Fate/stay night Heaven’s Feel 第一章』(アニプレックス?)
『GODZILLA』(東宝映像事業部)
『BLAME!』
『MINT』
『「ブレイブウィッチーズ」第13話』(KADOKAWA?)

■ 2017年?(公開の可能性が高い)
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第二章』(松竹メディア事業部)
「プリキュア」シリーズ 秋新作(東映)
「アンパンマン」シリーズ新作(東京テアトル)
『劇場版 ノーゲーム ノーライフ』(KADOKAWA)
『デジモンアドベンチャー tri. 第5章』(東映アニメーション/東映)
『劇場版 Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』
『魔法使いの嫁 星待つひと:後篇』(松竹)

[海外作品]

■ 3月10日
『モアナと伝説の海』 (ウォルト・ディズニー)
■ 3月17日
『SING シング』(東宝東和)
■ 4月1日
『レゴバットマン ザ・ムービー』(ワーナー ブラザース映画)
■ 4月8日
『映画 きかんしゃトーマス 走れ!世界のなかまたち』(東京テアトル)
■ 夏
『怪盗グルー3(仮)』(東宝東和)
『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』
『カーズ3(仮)』(ウォルト・ディズニー)

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