アヌシー映画祭 長編コンペ新たに2本発表 10作品の傾向は?

アヌシー国際アニメーション映画祭

 4月25日、アヌシー国際アニメーション映画祭が、今夏の長編部門オフィシャルコンペティションで新たに2作品を発表した。フランスJérémy Clapin監督の『I Lost My Body』、フランス・ルクセンブルク・スイスが共同製作する『The Swallows of Kabul』である。
 Jérémy Clapin監督はこれまで短編作品でキャリアを重ねてきたが、長編は今回が初挑戦となる。『The Swallows of Kabul』は、Zabou BREITMANとÉléa GOBBÉ-MÉVELLECのふたりが監督する。
 4月15日の発表と今回の2本で長編部門オフィシャル作品は、全て出揃ったとみられる。全10作品でグランプリにあたるクリスタル賞などを競うことになる。

 長編部門は日本作品が得意とするカテゴリーだが、今回は10作品中3作品『きみと、波にのれたら』(湯浅政明監督)、『バースデー・ワンダーランド』(原恵一監督)、『あした世界が終わるとしても』(櫻木優平監督)が日本からとなった。とりわけ湯浅監督は前作『夜明け告げるルーのうた』がグランプリ、原恵一監督も『カラフル』『百日紅~Miss HOKUSAI~』で2作連続受賞しており、今回も期待がかかる。
 
 ノミネーションは、今年はヨーロッパ勢が強さを発揮している。日本の3作品、そして中国の『White Snake』以外の全てを占めた。
 また今年は2D表現にこだわった作品が多くなっている。フル3DCGは『Ternet Ninja』、『White Snake』のみ。『The Swallows of Kabul』が手描きで、残りの作品はなんらかのかたちで2D表現を用い、平面的なビジュルを打ち出している。日本の『あした世界が終わるとしても』は3DCGでセルルックな映像に挑戦している。そうした技術の挑戦が評価され今回のノミネートにつながったと言えそうだ。
 一方で例年は何作品かが選ばれるストップモーションが今回はラインナップされなかった。世界的に2D表現のアニメーションが再評価される流れなのかもしれない。

 昨年はグランプリに輝いた『FUNAN』がカンボジア内戦、観客賞と審査員賞の『生きのびるために』がタリバン政権下のアフガニスタンを描き、政治的なテーマが注目を浴びた。今年も『The Swallows of Kabul』が、同じくタリバン政権下のアフガニスタンを扱っている。
 しかし『バースデー・ワンダーランド』や『Ternet Ninja』『White Snake』『The Bears Famous Invasion』など子どもも楽しめるファンタジーが増えている。世界全体ではなく、小さな世界を描く傾向も強まっているように見える。ジャンルも想定する鑑賞者も幅広く、バリエーションが豊富で、グランプリの行方も気になる。

 2018年までのアウト・オブ・コンペが再編されたContrechamp部門は全部で8作品。日本からは『海獣の子供』(渡辺歩監督)が選ばれている。
 当初長編コンペティションより斬新な作品をとしていたContrechamp部門だが、選考基準の差は今年はまだ曖昧だ。一方で8作品のうち西ヨーロッパの作品は『Zero Impunity』のみ。他は東ヨーロッパ、東アジア、カナダ、南米など多様な地域からとなっている。そうした多様性が、この部門の特長かもしれない。

アヌシー国際アニメーション映画祭
https://www.annecy.org/

[長編部門]
『Buñuel in the Labyrinth of Turtles』 Salvador SIMO (スペイン・オランダ)
『I Lost My Body』 Jérémy Clapin (フランス)
『Marona’s Fantastic Tale』 Anca DAMIAN (ルーマニア・フランス・ベルギー)
『The Bears Famous Invasion』 Lorenzo MATTOTTI (フランス・イタリア)
『The Swallows of Kabul』 
 Zabou Breitman、Eléa Gobbé-Mévellec (フランス・ルクセンブルク・スイス)
『きみと、波にのれたら』 湯浅政明 (日本)
『Ternet Ninja』 
 Anders MATTHESEN、Thorbjørn CHRISTOFFERSEN (デンマーク)
『あした世界が終るとしても』 櫻木優平 (日本)
『バースデー・ワンダーランド』 原恵一 (日本)
『White Snake』 Amp WONG、Ji ZHAO (中国)

[Contrechamp部門]
『Amp WONG, Ji ZHAO』 Gints ZILBALODIS (ラトビア)
『海獣の子供』 渡辺歩 (日本)
『Dia de Muertos』 Carlos GUTIERREZ (メキシコ)
『Homeless』 
 José Ignacio NAVARRO COX、Jorge CAMPUSANO、Santiago O’RYAN (チリ)
『Kung Food』 Haipeng SUN (中国)
『Underdog』 Sung-yoon OH、Chun-baek LEE (韓国)
『Ville Neuve』 Félix DUFOUR-LAPERRIÈRE  (カナダ) 
『Zero Impunity』 
 Nicolas BLIES、Stéphane HUEBER-BLIES、Denis LAMBERT (フランス・ルクセンブルグ)

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