
放送大手TBS ホールディングスが、アニメとそこから生まれるIP(知的財産)の大型投資に乗り出す。2025年5月14日、TBS ホールディングスは、アニメーションを中心とした企画、開発の新会社「株式会社 CIP(仮)」の設立を明らかにした。資本金は1億円、全額TBS ホールディングスが出資する。
新会社は制作からスタートし、そこから生まれたIPを展開するビジネスを目指す。国内外における放送、配信のほか、商品化やイベント、ゲーム化などを視野に入れる。さらに有望なIPへの投資と事業開発、新規事業の企画・運営と幅広い展開を目指す。
注目されるのはビジネスの大きさである。TBSは新会社、新事業のために300億円の投資枠を設ける。通常のアニメ製作予算が1タイトル数億円からと考えれば、同社のビジネス構想の大きさが窺われる。
事業開発にあたってはグループ会社だけでなく、外部パートナーとの協力も積極的に目指す。なかでも同じJNN系列に属するMBS(毎日放送)との協業に期待がかかる。
MBSはかねてよりアニメ分野を得意としており、深夜枠を複数設けて数多くのアニメを放送してきた。製作や出資でも主導的な役割も果たすことも多く、『鋼の錬金術師』、『機動戦士ガンダムSEED』といった大ヒット作も生みだしてきた。新会社にはMBS からも役員が加わり、開発、制作、展開においてな協力体制を築く。
またすでに戦略的パートナーシップを結んでいる動画配信大手サービスの「U-NEXT」との連携も視野に入れている。新会社が制作するアニメの配信を強化する。TBS側にとっては作品の露出と認知の拡大、U-NEXTにとってはライナップの強化による顧客獲得、サービス向上がメリットになる。
さらにTBS グループの「PLAZA」によりキャラクターグッズ販売やタイアップ、都内の大型複合施設「赤坂サカス」や現在開発中の赤坂エンタテインメント・シティでのイベント、カフェ、展示会といった展開も可能になるだろう。
新会社に求められるのはシンプルなアニメ・作品の企画・制作というよりも、グループのエンタテイメント事業の中心となるものを創出する機能と見ていいだろう。
かなり挑戦的なプロジェクトにも映るが、こうした動きは近年の大手放送局に共通した動きだ。テレビ放送の広告収入が漸減傾向になるなかで、各社は放送外収入の開拓を強く求められている。そのなかで二次展開が大きなアニメがひと際注目されている。作品がヒットした時に番組販売やライセンス販売の収入が大きく伸びるからだ。現在、大手放送各社はいずれもアニメ製作出資に積極的だ。
今回のTBSのチャレンジでは、さらにその先を目指しているとみられる。番組やライセンスの販売に加えて、作品の活用も自社及び自社パートナーでする方向性が見えるからだ。ビジネス全体をグループ・パートナーですることで、ビジネスの最大化を目指すことになる。