電子書籍事業の老舗イーブックイニシアティブジャパン(イーブック)が、ヤフーの傘下に入ることになった。2016年6月9日にヤフーが発表した同社に対する公開買付が8月29日に終了した。ヤフーは約26億6300万円で231万5700万株の応募を買付けた。さらにイーブックがヤフーを割当先に12万7800株の第三者割当増資を実施、これを約1億900万円で引き受けた。
ヤフーの持ち株比率は44.57%になり、イーブックはヤフーの連結子会社となる。これまで筆頭株主であったクックパッドは、全株式をヤフーに売却した。
イーブックは2000年に、現在の名誉会長である鈴木雄介らにより設立された。電子書籍時代の到来を先取りしたこと、人気の高いマンガに注力したこと、また当初より出版社と協業に積極的に対応することで急成長をしてきた。2011年に東証マザーズ市場に上場、2013年には東証一部に市場変更をしている。
売上高が伸びる一方で、近年の電子書籍市場はAmazonや楽天、honto(大日本印刷系)などのより資本力の大きな企業が勢いを増し、競争が激化している。2016年1月期は売上高71億円に対して営業損失と経常損失がそれぞれ1億6600万円、当期純損失も1億6300万円と上場以来、初の赤字となっていた。当期第1四半期(2016年2月~4月)も5000万円強の赤字を計上している。こうしたなかで総合ポータルサイトを中心に幅広くネット事業を手掛けるヤフーのグループになることで生き残りを目指すことになる。
ヤフーは今回の買収にあたり、イーブックと既存事業の「Yahoo!ブックストア」のシナジー効果を目指す。コンテンツ提供、販売促進、システム開発、集客のそれぞれで単独で事業をする以上の成果が期待できるとする。
また、男性読者の多いイーブックと女性読者の多い「Yahoo!ブックストア」のユーザーの補完関係も実現する。ふたつのサービスを併せることで、競争の増す電子書籍市場でのシェア拡大も存在感を発揮する効果もありそうだ。