2017年3月7日、イギリスのCGとVFXの大手スタジオCinesiteは、カナダのアニメーションスタジオであるNitrogenスタジオの買収を発表した。買収金額などの取引の詳細は非開示としている。
Cinesiteは1992年に設立、CG・VFXのスタジオのなかで長い歴史を持つだけでなく、映画「ハリー・ポッター」シリーズなどで知られる。イギリス、そしてハリウッド映画でも活躍するCGスタジオである。
Nitrogenスタジオは、カナダのバンクバーに拠点を持つ独立系の中堅CGアニメーションとVFXスタジオ。従業はおよそ70名になる。『きかんしゃトーマス』や、Netflixのシリーズ番組『トロール・ハンター』のアニメーション制作で知られている。また2016年には大人が楽しめる劇場映画『ソーセージパーティー』の大ヒットで一躍注目を浴びたばかりだ。
Cinesiteは2015年にも、バンクバーに拠点を持つ視覚効果で定評のあるImage Engineを買収している。このほかモントリオールにもスタジオを持っており、北米での制作拠点の増強に積極的だ。また、世界的に需要の増しているCGによる長編アニメーション映画への進出を目指している。
今回の買収で、クオリティの高い長編アニメーション映画の制作能力をいっきに引き上げる。CG長編アニメーション映画での今後の活躍を確かにするものとなりそうだ。
Nitrogenは現在『トロール・ハンター』の第2シーズン、オーストラリアのパッション・ピクチャーズとはゴシックテーストの少女キャラクターを主人公にした長編アニメーション映画『Arkie』の制作に取り掛かっている。これらもCinesiteの経営のもとで引き継がれることになる。
一方、Cinesiteは、タイトル未発表のHarold Lloyd projectと呼ばれる長編アニメーション映画の企画を進行中。さらにアイルランドのリバー・プロダクション、イマジナリー・フレンドと共同で映画『Riverdance』を製作中である。Nitrogenをグループに加えることで、制作ラインナップも一気に広がる。
北米では、2006年のディズニーによるピクサー・アニメーション・スタジオの買収、2016年のユニバーサルによるドリームワークスアニメーション買収、さらに2012年の中国企業によるデジタル・ドメイン買収など、CG・VFXのスタジオのM&Aが少なくない。
著名で実績のあるスタジオでも、ビジネス面では課題が多い。Nitrogenも、大手のCinesiteの傘下に入ることでこうした問題を解決することになる。逆に独立系としてビジネスを拡大するCinesiteの勢いを感じさせる。