東宝「中期経営計画」でアニメ事業を第4の柱に、成長ドライブに位置づけ

ファイナンス決算

 映画事業国内最大手の東宝が、アニメ重視を強力に打ち出した。2022年4月22日、東宝は22年2月期の通期連結決算を公表した。新型コロナ感染症影響を乗り越えて大幅な増収増益となる好調な業績だ。
 さらにこれに合わせた大きな発表も行われた。今後の会社経営の方針を示す「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」である。
 「TOHO VISION 2032」は、10年後を見据えた「長期ビジョン 2032」と3年後を目安にした「中期経営計画 2025」から構成されている。この両方でピックアップされたのが、アニメ事業の強化だ。今後の会社の成長においてアニメ事業に重点的に投資していくという。

「長期ビジョン 2032」 では、3つの重要ポイントを掲げている。ひとつは「成長投資」、ふたつめが「人材確保・育成」、そして3つめが「アニメ事業を第4の柱にする」である。
 また成長戦略の4つのキーワードも定めたが、これは「企画&IP」、「アニメーション」、「デジタル」、「海外」となる。ここにもアニメが含まれる。

 東宝の現在の事業ポートフォリオは「映画事業」、「演劇事業」、「不動産事業」の3つが柱となっている。アニメ事業は、映画製作・配給、映画興行(劇場運営)などと並び映画事業の一部門に過ぎない。新しい考えかたではアニメ事業を独立させて、4つめの柱として成長を目指すことになる。
 アニメーションを今後の成長牽引役と位置づけ、アニメの自社ブランドの競争力強化に集中する。劇場アニメだけでなく、テレビシリーズ、さらにそこから派生するゲーム、動画配信、パッケージ、商品化、舞台化、海外展開を手がける。映画事業とアニメ事業を両輪として利益を最大化するとしている。

 アニメ事業の具体的な取り組みは、主に3つになりそうだ。まず「企画開発への積極投資」だ。強い原作のアニメ化権の獲得やオリジナル作品、大型作品の開発といった作品への投資、同時にクリエイターや人材・組織への投資も実施する。
ふたつめは海外だ。北米などで海外拠点を整備して、現地でのマーケティング・商品化に乗りだすようだ。また海外共同制作や海外クリエイターの起用にも挑戦するとしている。
 最後はデジタルの活用で、オリジナル商品開発やライブコマースなどEC事業も拡張する。海外展開も視野にアニメからのスマホアプリゲーム開発もあげる。アニメに関連するビジネスを全方位、自前で展開する方針と読み取れる。

 国内を代表するエンタテイメント企業の大掛かりなアニメ事業拡張宣言は、サプライズも感じさせる。しかし、近年大きな潮流になっているアニメのビッグビジネス化のひとつとも見える。
 すでに2020年にはソニーが経営方針説明会でアニメ重視を打ち出して注目を集めた。この4月にはバンダイナムコホールディングスが、グループ内を代表するふたつのアニメ会社サンライズとバンダイナムコアーツのアニメ事業を統合したバンダイナムコフィルムワークスを誕生させたばかりだ。
 今回の東宝も含めて共通するのは、企画・製作・出資・制作・商品・海外・ライセンスマネジメントといった関連事業を自社グループのなかで完結させる統合的な取り組みだ。そうすることでアニメが映像の一分野、ニッチを越える強大な売上げと利益を実現出来ると考えるわけだ。こうした日本の巨大企業に、Netflixなどの映像配信プラットフォームを中心に海外の巨大企業もアニメビジネスへの関心を強めている。これからアニメを巡り巨企業がぶつかり合う、そんな時代が来るのかもしれない。

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