北米のコミック市場が引き続き成長している。北米のポップカルチャー業界誌ICv2とコミック市場データのComichronは、7月12日に2016年の米国とカナダ両国での市場規模を発表した。両社は2013年以来、共同でコミック市場を算出している。
発表によれば、2016年の北米市場は全体で10億8500万ドル(約1237億円)となる。前年の10億300万ドルから5%増加した。調査によれば2011年の市場は7億1500万ドルで、5年間で1.5倍になった計算。順調な拡大を続けている。
成長を牽引しているのは、グラフィックノベルと呼ばれる単行本スタイルのコミックである。2016年のグラフィックノベルの売上は5億9000万ドルで前年比16%増、これは前の年の23%増、その前年の16%に続く高い成長率になっている。
一方雑誌スタイルのコミックの市場は4億500万ドル。こちらも売り上げを伸ばしているが、そのスピードは緩やかだ。
これに伴い流通チャネル別の販売金額では、グラフィックノベルの比率が高い一般書店の割合が急伸している。ファン向けの専門店売上に急激に迫っている。
今回は日本マンガの売上や比率は明らかにされていないが、日本マンガ販売のほとんどはグラフィックノベルのスタイルで一般書店にてされている。日本マンガにとっては追い風と言っていいだろう。
市場全体の好調に対して、業界関係者を驚かせるのが、デジタルコミック市場の伸び悩みだろう。2016年は9000万ドルと全体の8%程度にとどまっている。2015年も9000万ドルであったから、ゼロ成長ということになる。市場全体の成長を考えれば、市場占有率はマイナスだ。
デジタルコミック市場は、2013年に9000万ドル、2014年に1億ドル、2015年、16年が各9000万ドルと過去4年間で全く広がっていない。音楽や映像の売上の急激なデジタル化、配信への移行、2010年前後に期待されたデジタル配信に対する期待からみると、現状はかなり意外な状況といえる。
デジタルコミックの伸び悩みの理由について、ICv2とComichronは言及していない。しかし、もともとコミックの購入はコレクションとしてのニーズが高かったことや、調査では定額読み放題サービスへの出費を除外していることも影響していそうだ。
さらにデジタルコミック配信のプラットフォームがAmazon.comと、2014年にそのAmazon.comに買収されて早々に子会社になったcomiXologyの2社にほぼ絞られている影響もあるかもしれない。デジタル市場が充分に成長する前に1社グループによるほぼ独占市場が築かれたことで、出版各社のデジタルに向ける意欲やビジネス開発への取り組みが急速に萎んだからだ。それでもアジアを中心にマンガやコミックのデジタル化は急速に進んでいるだけに、今後は世界の潮流と北米市場のずれが、どう調整されるのかも、興味深いものになる。