映画会社大手の東宝は、アジア地域の事業拡大を目的にシンガポールに戦略拠点を設けた。2024年2月に現地法人Toho Entertainment Asia Pte. Ltd.(TEA)を設立、11 月 1 日より事業を開始したと発表した。
TOHO Global代表取締役社長の植田浩史氏がCEOに就任、村山ファビオ隆運氏がマーケットディレクターを務める。新会社はアジア地域での映像作品やIPのライセンス展開、マーケティング、商品関連事業を展開する。当面は国内や北米で実績を残しているゴジラやTOHO animation 作品のライセンスやマーチャンダイジングなどの事業からスタートすることになりそうだ。北米に続き、アニメは海外進出の中核のひとつに位置づけられる。
Toho Entertainment Asiaの設立は、東宝が掲げる中期経営戦略「TOHO VISION 2032 東宝グループ経営戦略」の一環になる。このなかで成長戦略として、「企画&IP」「海外」「アニメーション」が掲げられている。海外事業の強化が成長戦略の主軸となっていることが分かる。
東宝は2019年に北米法人のToho International, Inc.を増強し、新たな北米ビジネスの戦略拠点とした。Toho Entertainment AsiaはToho Internationalに続く、海外の戦略拠点になる。北米では2023年に『ゴジラ-1.0』の配給で大きな成功を収めるなどの成果を見せている。そうした事業を今後映画やキャラクター事業で成長が見込まれるアジア地域に広げる狙いがある。現地法人を持つことで、地域の市場やニーズを把握したビジネスが期待される。
成長戦略に組み込まれていることもあり、東宝の海外事業は近年急ピッチで進んでいる。2023年には国際部門を独立させた海外事業の統括会社TOHO Globalを立ち上げた。Toho InternationalとToho Entertainment Asiaも同社の子会社に位置する。
さらに海外でのM&A事業にも積極的である。2023年11月にはタイのアニメーション制作会社IGLOO STUDIOに出資、米国ではドラマ製作・販売のFIFTH SEASONにも出資した。今年10月には、米国の映画配給会社GKIDSを子会社化すると発表し、国内外の映画・アニメーション関係者にサプライズを巻き起こした。
積極的なM&Aは日本が苦手とする海外でのゼロからの事業立ち上げのリスクを減らしつつ、短期間で事業を拡大することを可能とする。東宝では今後も北米、アジアだけでなく、さらなる海外拠点の展開も視野に入れているとしている。