スタジオポノックが初の長編劇場アニメ 米林宏昌監督で「メアリと魔女の花」

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2016年12月15日、2017年夏の東宝全国公開に向けた長編劇場アニメ『メアリと魔女の花』の製作が発表された。イギリスのメアリー・スチュアートの児童小説を原作に、『借りぐらしのアリエッティ』、『思い出のマーニー』でもお馴染みの米林宏昌が監督・脚本を担当する。
注目されるのは、本作のスタッフ陣である。アニメーション制作は、米林監督も所属するスタジオポノックが担当する。スタジオの設立は2015年4月とわずか1年半前、これまでにJR西日本の「SUMMER TRAIN! キャンペーン」のPVを制作はしているが、劇場アニメ、テレビアニメなどの実績はない。歴史の短いアニメスタジオの夏の大作映画の制作はかなり異例だ。

異例の抜擢は、スタジオポノックの設立の経緯にありそうだ。スタジオを立ち上げたのは、『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』でプロデューサーを務めたスタジオジブリ出身の西村義明と米林監督が、東京都武蔵野市を拠点に立ち上げた。
設立は『思い出のマーニー』公開の翌年だから、長編アニメの制作の休止に入ったスタジオジブリの『思い出のマーニー』の制作チームが新たな会社に移行したともみられる。
スタジオポノックは、2015年夏には、スタジオジブリの背景を担当したスタッフを中心に設立された背景スタジオ でほぎゃらりーを関連会社としている。スタジオジブリ直系ともいえる。『メアリと魔女の花』を配給する東宝、他のビジネスパートナーにとっても、信頼が出来るスタジオである。

むしろ、ポストスタジオジブリを摸索するアニメ業界にとっては、歓迎すべき展開ともいえるだろう。実際に海外児童文学を題材にする映画はスタジオジブリが長年築き上げた成功パターンのひとつ、さらに製作発表と同時に公開されたビジュアルには、これまでのスタジオジブリの影響を色濃く残す。そうした作品は、これまでスタジオジブリ映画を楽しんできたファンにも受け入れられそうだ。

一方で、小さな懸念も残る。近年、日本の劇場アニメはその市場を飛躍的に拡大し、その多様性を増している。スタジオ地図を拠点にする細田守監督、2016年に大ヒットを飛ばした新海誠監督、さらに京都アニメーションの山田尚子監督『聲の形』、片渕須直監督『この世界の片隅に』など、スタジオジブリとは異なるスタイルでファンを獲得する。
『メアリと魔女の花』と米林宏昌監督がスタジオジブリスタイルをひとつのフォーマットとして継承していくことは可能であるが、それだけであれば逆にスタジオジブリを超えられない。2017年は現在発表されているだけでも、新房昭之総監督『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』、湯浅政明監督『夜は短し歩けよ乙女』など劇場アニメの話題作が目白押しだ。同じと思わせて、その中で米林監督、スタジオポノックらしさがどう表現されるのか、劇場アニメ百家総攬のなかでどのようなポジションを取るのか、そこが注目される。

スタジオポノック (STUDIO PONOC)  http://www.ponoc.jp/
『メアリと魔女の花』公式サイト http://www.maryflower.jp

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