東宝がIP・アニメ事業を独立 2032年までに人員・利益・作品数の倍増目指す

ファイナンス決算

■IP・アニメ事業を分離・独立、今期売上は698憶円

 映画大手の東宝が2026年2月期より主要事業のセグメントを再編する。これまでは「映画」「演劇」「不動産」の3つを経営の主要セグメントにしていたが、新たに「IP・アニメ事業」を加えて4事業体制にする。東宝はすでに2022年に発表した「中期経営計画2025」でアニメを第4の柱として重点事業にしていたが、今回からは決算報告書における事業セグメントにもそれを反映させる。
 IP・アニメ事業には、映画事業のうち映画映像事業の一部と映像事業の中核となっていたアニメ部門TOHO Animationの企画・製作・ライセンスを分割し独立させる。さらにゴジラ関連のライセンス事業を切り離して加える。従来のアニメ事業だけでないIP・アニメ事業となることで、25年2月期のアニメ事業554憶円から26年3月期698億円(見通し)と膨らむ。これは演劇事業を大きく超え、不動産事業に匹敵する規模になる。

■さらに大きな成長目指すアニメ事業 2032年までに規模2倍に

 新事業の設立は、これまでのアニメ事業の成長性の高さが背景にあるだろう。「第4の柱」を打ち立てた23年2月期に242憶円だったアニメ事業の売上は、25年2月期にはわずか2年で554憶円へと倍増している。
 独立した事業セグメントになった後も、引き続きこうした高い成長が期待される。それを支えるのが積極的な投資だ。東宝は映画・アニメ・演劇・ゲームなどの企画・製作、IP創出に今後3年間だけで約700億円を投下するとしている。実写・アニメを問わず、製作出資の拡大やM&Aも視野に入っているとみていいだろう。
 実際により長期の目標ではあるが、東宝は今回、企画・製作するアニメのクール数を現在の14クールから2032年には30クールまで拡大することを掲げた。アニメ事業の中核であるTOHO animationの人員も現在の60名から120名まで倍増し、さらに制作スタジオ機能も強化する。IP・アニメ事業の営業利益も2倍以上が目標だ。

■「映画・演劇」会社から総合エンタテイメント企業に

 IP・アニメ事業で注目されるのが、これまでのアニメ事業に、さらに「IP」を加えることで事業の領域をより大きくしたことだ。領域拡大のひとつが、実写作品であるゴジラのライセンスや商品展開をIP・アニメ事業に移したことだ。またグッズ販売・EC事業の東宝ステラや音楽事業の東宝ミュージックもIP・アニメ事業に含まれる。
 もうひとつは海外である。Toho GlobalとToho International、TOHO Entertainment Asiaの3つの海外事業会社、さらに北米の映画配給会社GKIDSもIP・アニメ事業の中に組み込まれる。IP・アニメ事業で手がける事業はアニメだけにとどまらない。

 IP・アニメ事業は単なるアニメ部門の分割独立でなく、東宝の未来に向けたより大きな事業拡張戦略の一端だと見て取れる。アニメだけにとどまらないライセンス、二次展開ビジネスの拡大である。アニメが得意としてきたメディアミックスと呼ばれるビジネスモデルを、実写やキャラクターにも広げようというわけだ。
 東宝はこれまでは映像や演劇といった「作品を生み出し、届ける会社」だった。しかしIP・アニメ事業がうまく機能すれば、東宝は作品を生み出し、届けるから、さらに活用し、広げる巨大ライセンスカンパニーへとアイデンティティを変えることも可能になる。そう考えれば、IP・アニメ事業にゴジラの二次展開や海外番組・ライセンス販売、海外配給が含まれるのも違和感はない。

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