東宝×「World Maker」 ジョーダン・ロバーツ監督はいかに短編実写化作品を選びだしたのか (後編)

「東宝×World Maker短編映画コンテスト」

「短編映画コンテスト」では、一次選考、二次選考を経てファイナリストとして13作品を決定。さらにジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督が加わった最終選考で大賞1作品、準大賞1作品、佳作3作品を決定した。
 大賞は奇多郎さんの『顔のない街』に決定、誰でも自分の顔を思ったとおり直せる社会を描いた作品だ。短い尺のなかに社会批評性や人の心の複雑さが描かれている。本作は今後、東宝により実写短編映画化される予定だ。公開時期などは、決まり次第告知される。
 また当初予定になかった準大賞・ベスト絵コンテ賞として、はづれ かふ さんの『スタントダブル』。さらに佳作としてジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督賞に『命の授業』(久坂晶啓さん)、東宝賞『透明の証明』(塩野菜さん)、集英社賞『global warming』(みーやさん)の3作品が選ばれている。いずれも「World Maker」のアプリで閲覧できる。

「World Maker」公式サイトhttps://worldmaker.app/lp

【東宝短編映画コンテスト】最終選考結果発表!
https://note.com/worldmakerapp/n/n304ffd81d9c9

審査を終えたロバーツ監督と東宝のエンタテインメントユニットで開発チームリーダー馮年さんに、「World Maker」と今回の応募作品について伺った。

―――監督は今回の「東宝×World Maker短編映画コンテスト」で、どんな基準でアワードを決めよう思われたのですか?

ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督(以下、ロバーツ監督)
最初にみんなで合意したのは、全体のストーリーがもっとも優れた作品にしようということです。
作品のなかには、とてもダイナミックなストーリーボードもありましたし、逆にストーリーボードはそこまでアクティブでないのですが、世界観やストーリーが素晴らしい、あるいはコンセプトが素晴らしいといったものがありました。その辺のバランスを考えながら、大賞に一番相応しい作品を選びました。

――実写となるとマンガやアニメと違って、映像化にすごく予算がかかる場合もありそうです。選考する時に、それは念頭にあったりしましたか?

ロバーツ監督
確かに実際に映画化するためのコンテスト企画なので、全員がすごく気に入ったのですが「ちょっと壮大過ぎて映像化するのは難しそうだね」みたいな話は出ました。ただ予算のことを全く考えてなかったわけではないですが、基本的にはストーリーが一番良いものです。今回の入賞作品の中に、その壮大な作品も入っています。たとえ予算的に難しそうなものであっても、東宝や集英社にはそういった若いクリエイターたちをサポートし欲しいなと思います。短編だけでなく長編でも、トライできる場をどんどん設けて欲しいです。

――今回のファイナリストには比較的若いかたが多かった印象があるのですが、そうした人たちにこれからストーリーボードを作っていくうえで、アドバイスはありますか?

ロバーツ監督
年齢について言えば、今回参加されたかたの年齢はすごく幅広かったです。何歳になっても新たな挑戦ができることは素晴らしいと思いました。たとえ何歳になっても、そんな挑戦できることは素敵ですよね。
「World Maker」のようなアプリの開発は、特に若いクリエイターにとってすごくいいものだと思います。新たな挑戦をする時の最初のステップを踏むきっかけになるんじゃないかなと思います。
映画を作るには、いろいろなステップ、それこそ何万ものステップがあるんです。脚本を作って、衣装を決めて、ロケ地決めて、映像を作り、VFXを入れてとか。そんな多くのステップの中で、自分がもともと作りたかったものを完璧に映像化することはすごく難しいはずです。
頭の中でクリエイティブが出来上がっていても、最初はスキルとか経験がそこに及んでいないのでギャップができてしまいます。そのギャップを埋める作業はすごくつらくて、長い時間がかかるものです。けれども何度も自分のスキルを磨くなかでだんだんそのギャップが埋まっていきます。本当に自分の求めているものと作品を同じレベルにするためにギャップを埋めるプロセスは必要で、「World Maker」はそれをやっていくなかで役に立つひとつのツールになるんじゃないかなと思っています。

あとアドバイスは、世の中に出て傷つく覚悟は大事だということです。友達や家族に作品を見せると「すごいね」って褒めてくれるはずです。けれども業界でそれはあまり役に立ちません。素直に作品を批判し、相手もそう言ってくれる関係性が構築できることが業界で生きていくうえで大切です。
傷つくのでないかとか、失敗するんじゃないかって、最初のステップを踏むことを怖れる人はかなり多いのです。今回コンテストに挑戦されたかたたちは、それだけですごいことです。

―――監督と馮年さんにそれぞれ気に入った作品、どこが心惹かれたかを教えていただけますか。

ロバーツ監督
全部面白かったという前提で、特に気に入ったものが5つあります。「スタントダブル」「global warming」「命の授業」と「顔のない街」、それに「透明の照明」が素晴らしい作品でした。
「顔のない街」は、テーマがすごく面白いです。自分のアイデンティティを商品として扱っています。顔を変えるとか誰かから「顔を変えた方がいいんじゃない」って軽く言われてしまう時代は、今後、本当に来てもおかしくないので、今の時代に合っているテーマですね。
「global warming」もすごいクリエイティブでしたね。怪獣ファンである私には、すごく面白くて、同時にかわいらしい話だなとも思いました。人間が巨人に対して抱く「敵かもしれない」、「いや味方かもしれない」と行ったり来たりするのが、ユーモアとして面白かったです。「地球温暖化を止めよう」といったシンプルなメッセージですけど、その描き方にすごいオリジナリティが溢れています。
「命の授業」は「顔のない街」と若干テーマが近く感じていて、ぜひ二人で何かのかたちでコラボレーションしてほしいと伝えました。「命の授業」では、人間の肉体を殺さずにその精神だけ殺すことができるといった人間が生まれ変わることにフォーカスしたストーリーなんです。「自分の記憶が消されても、俺のニコチン中毒は治らない」と言ったり、人間の精神と体、肉体と頭の中はどういった繋がりがあるのかを考えさせられるのが面白いストーリーだと思いました。
「スタントダブル」は、ストーリーボードとレイアウトが素晴らしい完成度でした。私はアカデミー賞でもスタント部門があってもいいとて思うぐらいスタントの俳優さんたちを尊敬しているので、ストーリーとして面白いところに着目したなと思っていました。スタント俳優さんたちの日本とアメリカの文化の違いも書かれていて、さらに主人公が女性であることで新たな要素が加わっています。
最後の「透明の照明」は、ストーリー全体のトーンが最初ちょっとコメディっぽくて面白そうな雰囲気から始まりますが、だんだんヴァイオレンスになっていく。透明の使い方も、今までにないキャラクターが他の人や物に触ったらそれを透明にすることができるという要素がユニークです。

馮年さん(以下、馮)   
僕は「透明の照明」と「命の授業」、あとは「スタントダブル」。ここは監督と重なります。あとは「月面都市入国監視員」と「Loving Dead」が面白かったです。
「顔のない街」もすごい好きだったし、「global warming」もめちゃくちゃ面白かったんですけど予算大変だなと思って、ちょっと自分の心を押し殺したんです。
今まで透明人間モノはいろいろあるんですけど、「透明の照明」は相手を透明化して攻撃するっていうのは発明でした。映像化したときにも面白くできそうだと評価しました。「スタントダブル」は、絵コンテとしての完成度が高さ。今回はみんな初めてなので絵コンテどういうものかわかってないところもあったのですが、その中で動きをしっかりと見せることでストーリーボードとしてうまく機能していました。
「命の授業」はとにかくテーマが良かったです。テーマ設定が「体なのか記憶なのか、アイデンティティはどっちに宿るのか」といったことが問題になっている。
「Loving Dead」はゾンビモノですけれども、アプリをうまく使っています。冒頭は一人称で進んでいきますが、途中からその主人公がゾンビだったことが明かされる。そういう視点のコントロールをアプリをうまく使ってやっている。そこのサプライズが面白かったです。「月面都市入国監視員」は、月面におけるAndroid反対派と推進派というイデオロギーの対立が構図として見て取れました。そこは掘り下げてはいなかったのですけど、映像化を考えるとそこに何らかのテーマ性を持たせれば対立という切り口で描けます。設定が面白かったので僕は評価しました。

―――コンテストを終えて、今後の見通しについて教えていただけますか?


「少年ジャンプ+」の林(士平)さんとずっと話しているのは、「World Maker」のコンセプトを世界に向けて広げていきたいということです。日本のかたがコンテをどんどん使えるようになっていくように、海外でもどんどん使う人が増えるように広げていきたいです。
すごく幸運なことに1回目のコンテストにジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督に参加していただいたので、世界への道は開きやすくなったんじゃないかなと思っています。集英社さんと画策しているのは、アプリを英語でも投稿できたり、他の言語でも投稿できるようにして、海外からも応募できるようにゆくゆくはしていきたいですね。

[参考リンク]
【東宝短編映画コンテスト】ファイナリストを発表!
https://note.com/worldmakerapp/n/nc5ee6bd183f5

前編はこちら

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